消防法を違反するとどうなるの? 罰則の内容や規程一覧をチェック!

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「消防法」は、火災を予防し国民の生命や身体および財産を保護することが目的です。また、地震などの災害による被害を軽減するほか、災害時による傷病者の搬送も含まれています。私たちの生活を守る法律だからこそ、きちんとルールを守らなければなりません。消防法に反することがあれば、罰則が科せられます。私たちが日々を過ごしているオフィスやマンション・ビルなどの設備もすべて消防法に基づいているため、決して他人事ではありません。

本記事では、消防法の罰則について解説します。

  1. 消防法の基礎知識
  2. 消防法の罰則はどんな内容か?
  3. 消防法罰則規定の一覧をチェック!
  4. 消防法の罰則に関してよくある質問

この記事を読むことで、消防法の罰則について詳しく知ることができます。気になっている方は、ぜひチェックしてください。


1.消防法の基礎知識

まずは、消防法の概要、内容、目的と基礎知識をチェックしておきましょう。

1-1.消防法の概要・内容は?

消防法は、消防機関の活動や権限、消防設備等の設置・義務・規制など基本的な事項を定めている法律です。主に、火災予防、危険物の取り扱い、消防用設備の設置・維持を定めている項目が記載されています。

また、消防設備士などに設置・変更・整備・点検に当たらせる重要な内容も記載されている法律です。消防法を基準に、消防設備を設置・点検することになります。以下に、消防法に記載されている主な項目をまとめてみました。

  • 消火設備:消火設備の種類設置基準など
  • 危険物の運搬:混載できる危険物の組み合わせや、危険物の運搬容器の基準など
  • 危険物取扱に関する主な標識と掲示板など
  • 危険物の貯蔵・保管:指定数量第4類危険物の指定数量

1-2.主な目的は?

消防法の主な目的は、以下の3項目に分かれています。

  • 火災の予防・警戒・鎮圧により国民の生命・身体・財産を保護する
  • 災害による被害を軽減する
  • 災害等による傷病者の搬送を適切に行う

以上の3点を踏まえた上で、安寧秩序を保持し、社会公共の福祉増進に資することを目的としています。消防法に基づくルールをきちんと知り徹することで、安心できる生活が送れるのです。

消防法は火災から人命や財産を守るための法律なんですね。
はい。ですから遵守しなければなりません。

2.消防法の罰則はどんな内容か?

生命や財産を守るための「消防法」に違反すると、どのような罰則が科せられるのでしょうか。ここでは、罰則の内容と対象者、主な流れについて解説します。

2-1.罰則の内容は?

消防法の罰則は、処罰となる内容によって異なります。たとえば、スプリンクラー・消火器などの基準が定められている「消防設備」の場合、定期的な点検が定められており、罰則が科せられるときは不備・虚偽があった場合です。内容に基づき、罰金の金額と懲役の年数が異なります。どのような違反をしたかによって、罰則の内容が異なることを覚えておきましょう。

2-2.罰則の対象者は?

消防法の対象となる「防火対象物」の所有者・管理者・占有者など関係者です。たとえば、防火対象物に対する措置命令に違反した者などが当てはまります。また、内容によっては、法人の代表者または法人もしくは代理人が違反行為を行った場合は、法人も対象者です。たとえ、個人の対象者が違反行為をしたとしても、法人に対しても同時に罰則が科せられるケースがあります。

2-3.罰則事例をピックアップ!

それでは、主な罰則事例をいくつか紹介します。

  • 防火対象物に対する措置命令に違反した者(使用禁止・停止・制限など):3年以下の懲役または300万円以下の罰金
  • 消防用設備等または特殊消防用設備等の措置命令に違反した者:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 防火管理者選任命令に違反した者:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
  • 立入検査を拒否等した者、資料提出命令・報告徴収命令に違反した者:30万円以下の罰金または拘留

平成13年9月1日に発生した「新宿歌舞伎町の小規模雑居ビル火災」では、小さなビルであるにもかかわらず、44名の犠牲者を出す大惨事となりました。平成20年7月に行われた裁判によって、ビルの所有者6名に業務上過失致死傷罪事件の判決が言い渡されたのです。

この大惨事が起きたのは、消防法に基づいた設備の設置・点検が行われなかったことが原因だとされています。そして、この事件をきっかけに、違反是正と防火管理の徹底や避難安全基準の強化を中心とした大規模な消防法の改正が実施されました。

2-4.罰則の流れ

消防法に違反すると、取り締まり→是正指導または警告→略式起訴→罰金刑という流れで進んでいきます。消防法に基づき、消防用設備の点検はその結果を定期的に報告しなければなりません。報告がない場合は取り締まりが強化され、消防署による指導や警告が言い渡されるでしょう。それでも改善されない場合は、略式起訴が実施されます。

略式起訴とは、通常の起訴手続きを簡略化した起訴方法で、100万円以下の罰金・科料に相当する事件である場合に利用することがほとんどです。

2-5.警告と行政指導とは?

違反をした場合は、最初に「警告」が行われることになります。警告とは、違反事実または火災危険等が認められる事実について、防火対象物の関係者に対し、違反の是正または火災危険等の排除を促すことです。警告に従わない場合は、命令・告発等の法的処置を持って対処することの意思表示でもあります。

そして、行政指導とは、行政機関が一定の行政目的を実現するため、特定の者に指導・勧告・助言を行うことです。行政指導を行っても改善されていない場合は、罰則を科せられるので注意しなければなりません。いずれも、消防法の罰則につながる重要な項目となります。

罰則は罰金刑なんですね。
はい。それに加えて、社会的な信用も失うことになるでしょう。

3.消防法罰則規定の一覧をチェック!

消防法の罰則には、「命令違反に対する罰則」と「規定違反に対する罰則」があります。それぞれについて、詳しくチェックしておきましょう。

3-1.命令違反に対する罰則

原則として違反処理基準に基づいて警告・命令を発動することを「命令違反に対する罰則」と言います。主な「命令違反概要」と「罰則内容」を以下にピックアップしてみました。

  • 屋外における火災の予防または消防活動の障害除去のための措置命令に従わなかった場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 資料提出命令に従わなかった場合、報告を求められても報告しなかった場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 防火対象物に対する措置命令に従わなかった場合:2年以下の懲役・200万円以下の罰金
  • 防火管理者選任命令に従わなかった場合:6か月以下の懲役・50万円以下の罰金
  • 防火管理業務適正執行命令に従わなかった場合:1年以下の懲役・100万円以下の罰金
  • 防火対象物の点検虚偽表示除去・消印命令に従わなかった場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 消防用設備等または特殊消防用設備等の措置命令に従わなかった場合:措置命令違反1年以下の懲役・100万円以下の罰金
  • 防災管理点検の特例認定の表示に係る虚偽表示除去・消印命令に従わなかった場合:30万円の罰金・拘留など

そのほかの罰則に関しては、「消防法罰則規定一覧」をチェックしてください。

3-2.規定違反に対する罰則

「規定違反に対する罰則」とは、罰則の適用を促すための措置(告発・過料事件の通知)を実施することです。主な内容は、以下のとおりとなります。

  • 正当な理由なく立入検査を拒否した場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 防火管理者の選任・解任の届出を怠った場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 防火対象物の点検結果を報告せずまたは虚偽の報告をした場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 違法に防火対象物の点検済表示をした場合または紛らわしい表示をした場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 防火対象物の特例認定を受けたものが、管理権原者の変更届出を怠った場合:5万円以下の過料
  • 違法に防火対象物の特例認定の表示をした場合または紛らわしい表示をした場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 防災性能を有するもの以外に指定表示または紛らわしい表示をした場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 消防用設備等の検査を拒否した場合、設置の届出を怠った場合:30万円以下の罰金・拘留
  • 消防用設備等の点検結果を報告せずまたは虚偽の報告をした場合:30万円以下の罰金・拘留
罰則にもいろいろな種類があるんですね。
はい。すべて覚える必要はありませんが、違反すれば罰則があることは知っておきましょう。

4.消防法の罰則に関してよくある質問

消防法の罰則に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.防火対象物とは?
A.不特定多数の人に利用される建造物のことを「防火対象物」と言います。たとえば、映画館・デパート・工場・劇場・映画館・カフェ・飲食店・カラオケボックスなどです。これらの施設は多数の人が出入りし、敷地が広大で構造が巨大なので、火災が発生したときには人的・物的に甚大な被害が生じる可能性があります。だからこそ、通常の建造物よりも厳しい防火管理が求められており、法的に必要な措置を講じるために「防火対象物の制度」が設けられました。消防法には、防火対象物の制度や設備などの設置基準が細かく記載されています。

Q.なぜ消防設備の点検報告が義務づけられているのか?
A.消防設備は、形式上設置してあれば良いというわけではありません。設置されていても、いざというときに、正しくその機能を果たさなければ火災から命を守ることができなくなります。消防設備の機能を正しく発揮するためには、定期的な点検とその結果の報告義務が必要なのです。設置後の維持管理がきちんとできているのか点検し、管轄の消防署へ報告するのはとても大切な作業と言えるでしょう。また、消防点検が抜き打ちで行われ、違反がある場合には即時の改善を求められることがあります。

Q.消防法に基づく罰則のほかに科せられるものとは?
A.火災や災害が起きた場合、被害者が出るでしょう。消防法に基づく罰則のほかに、被害者や遺族に対する賠償が民事訴訟によって問われることになります。そして、刑事訴訟によって懲役刑が科せられるという流れです。科せられる罪の重さは、火災・災害の被害状況と比例します。

Q.立入検査はどんなことか?
A.火災予防のために必要があるときに行われるのが「立入検査」です。消防法第4条の規定により、防火対象物に立ち入って検査を行います。防火対象物や危険物施設等に対して、建物と設備が消防法令に基づく基準に適合しているのか、消防職員が定期的にする検査です。消防署員による立入検査が行われた後は、「立入検査結果通知書」が渡されます。通知書には、指摘事項が記載されており、その内容に応じて改善計画を提出し、期限を決めて対応しなければなりません。きちんと対応しなければ、罰則の対象となる可能性があるので注意しましょう。

Q.新宿歌舞伎町雑居ビル火災をきっかけに、どんな内容に改正されたのか?
A.従来の消防法よりも取り締まりが厳しくなりました。主な変更内容は以下のとおりです。

  1. 24時間いつでも事前通知なしに立入検査ができる
  2. 使用禁止命令等を発動する要件が明確化
  3. 避難障害となる物品の除去等について消防署員がその場で命令できる
  4. 消防法違反で命令を受けた場合は、その旨の標識を消防機関が設置する
  5. オーナー責任の罰金は最高1億円
  6. 防火対象物を年1回点検する制度を創設

以上の項目の中でも、注目してほしいのが1番と6番です。従来の消防法では、事前通知が行われてから立入検査を行っていました。しかし、それでは検査前に虚偽を行う可能性があります。きちんと行っているか真実を追及するためにも、突然の立入検査ができるようになりました。そして、不特定多数の人が出入りする防火対象物は、最低でも年に1回の点検が義務づけられています。多くの人が行き交う施設だからこそ、ほかの建築物よりも入念な点検が必要なのです。

まとめ

消防法は火災や地震など緊急時の際に、私たちの身を守ってくれる大切な法律です。オフィスや商業施設など、人が多く集まる場所はきちんと消防法に基づいた設備を設置し、定期的な点検を行わなければなりません。消防法を違反すると、罰則が科せられることになります。罰則は、違反の内容で異なりますが、罰金300万円以下、懲役3年以下と重い罪に問われることもあるのです。特に、法人の場合は、罰金1億円以下と罰則内容がさらに重くなります。違反すると大きな罰則を科せられることもあるため、しっかりと消防法の内容を理解しておかなければなりません。命を守るためにも、消防法を知り、規則を守りましょう。

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