ビル管理法に関係する建築物環境衛生管理基準とは?

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衛生管理者や建築物環境衛生管理技術者の資格を取得するなら、建築物環境衛生管理基準の知識を身につけておかなければなりません。建築物環境衛生管理基準はビル管理法とも密接に関係している基準です。では、建築物環境衛生管理基準とは一体どんな内容なのでしょうか。これから、建築物環境衛生管理基準の知識や建築物環境衛生管理技術者について解説します。

  1. 建築物環境衛生管理基準とは
  2. 建築物環境衛生管理基準の内容について
  3. 建築物環境衛生管理基準の届出や資格について
  4. 建築物環境衛生管理技術者について
  5. 建築物環境衛生管理技術者の試験概要
  6. 建築物環境衛生管理技術者に関するよくある質問

この記事を読めば、建築物環境衛生管理基準や資格取得のための必要な情報を得ることができます。また、自分に合った勉強法を見つけ有効的な試験対策ができるでしょう。


1.建築物環境衛生管理基準とは

建築物環境衛生管理基準とは、環境衛生を良好な状態に保つための必要な処置です。建築物環境衛生管理基準に関連する資格を取得するためにも、必要な知識を身につけておきましょう。

1‐1.建築物環境衛生管理基準の概要

建築物環境衛生管理基準は、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則」、通称「建築物衛生法」によって基づいている基準です。建築物衛生法では建築物環境衛生管理基準に従って、衛生環境の維持管理・監督することが義務づけられています。建築物の環境衛生を維持管理する事業者は都道府県知事から登録を受けられるでしょう。

建築物衛生法

1‐2.建築物環境衛生管理基準の目的と必要性

建築物環境衛生管理基準は、空気環境の調整や給水および排水の管理、清掃、ねずみ・昆虫の防除など、環境衛生を維持するための必要な処置です。基準に沿って建築物を安全に衛生管理すること、高い水準かつ快適な環境の実現を目的としています。私たちが安心して生活できるのは、建築物環境衛生管理基準がしっかり守られているからです。特に、オフィスビルや商業施設、ホールなど人が多く集まる場所は衛生管理が大切になります。

1‐3.建築物環境衛生管理基準が適用される場所

建築物環境衛生管理基準が適用される場所は、興行場・店舗・事務所・学校・百貨店などです。一般家庭では適用されません。人が多く集まる場所、行き来する場所は汚れやすく、衛生環境が悪くなりがちです。よって、基準・規定をつくり安全衛生管理の維持に努めなければなりません。

2.建築物環境衛生管理基準の内容について

それでは、建築物環境衛生管理基準の内容について見ていきましょう。

2‐1.空気環境の調整

建築物内の空気を清潔に維持するためには「空気環境の調整」が大切です。空気環境の調整には、空気調和設備や機械換気設備を設けている場合の空気環境の基準から測定方法、設備において衛生上必要な措置が詳しく記載されています。たとえば、機械調和設備の測定をする際、建築物衛生管理基準で定められている二酸化炭素の含有率をチェックしなければなりません。二酸化炭素の含有率は、1日の使用時間中の平均値を基準としています。測定器には検知管方式による二酸化炭素検定器を使うことになるでしょう。ちなみに、空気環境の測定をするには建築物環境衛生管理技術者といった資格が必要不可欠です。

2‐2.給水の管理

建築物環境衛生管理基準の水質検査は安全な飲み水を確保するための大切な内容です。飲料水の水質検査を定期的におこなうことで適切な給水管理ができるでしょう。水質検査には、遊離残留(ゆうりざんりゅう)塩素の測定、水質基準に関する水質検査があります。また、安全な飲料水を維持するためには「貯水槽の清掃」も必要不可欠です。

2‐3.排水の管理

給水の管理と平行しておこなうのが「排水の管理」です。排水設備が正常に動いているかどうか確認しつつ、汚水が生まれないように設備の補修・清掃をおこないます。排水設備の清掃は6か月に1回のペースです。また、排水の管理は「空気調和設備などの維持管理および清掃などにかかわる技術上の基準」に従わなければなりません。

空気調和設備などの維持管理および清掃などにかかわる技術上の基準

2‐4.清掃

日常的に掃除をおこなうのも建築物環境衛生管理基準の1つです。また、毎日掃除をしながら6か月に1回は大掃除を実施しなければなりません。そして、掃除・掃除用機器・廃棄物設備の維持管理では「空気調和設備などの維持管理および清掃などにかかわる技術上の基準」に沿っての実施が定められています。

2‐5.ねずみ・昆虫などの防除

人の出入りが激しい場所では衛生環境を悪化させるねずみ・昆虫などが発生します。もし、発生したときはすぐに防除しなければなりません。ねずみ・昆虫などの防除に関する措置内容は以下のとおりです。

  • 6か月に1回、ねずみなどの発生場所、生息場所、侵入経路ならびにねずみなどによる被害の状況を統一的に調査すること
  • 調査結果に基づき、ねずみなどの発生を防止するため必要な措置をすること
  • ねずみなどの駆除のため殺虫剤、殺そ剤を使用する場合は薬事法の規定を受けた医薬品、医薬部外品を使うこと

2‐6.そのほか

ほかにも、建築物内の照明や採光管理、照明設備の点検、救急用具の備え、騒音防止などがあります。建築物の衛生管理にかかわることすべてが建築物環境衛生管理基準の内容になるでしょう。

3.建築物環境衛生管理基準の届出や資格について

建築物環境衛生管理基準を守って衛生管理を維持するには、届出や特定建築物について把握しておかなければなりません。また、建築物衛生管理基準に関する資格も一緒に見ていきましょう。

3‐1.建築物環境衛生管理基準の届出について

特定建築物に該当する、または増改築によって該当することになった場合、建築物環境衛生管理基準に基づいての届出が必要です。届出の内容や届出様式については各自治体によって異なります。以下のURLでは東京の各種届出様式がダウンロードできるのでぜひチェックしてみてください。

東京都健康安全研究センター「建築物衛生のページ」

3‐2.特定建築物について

特定建築物とは興行場や百貨店、店舗、事務所、学校などの建築物で、ある程度の規模を有するものです。以下の項目すべてに当てはまる建築物が特定建築物になります。

  • 建築基準法に定義された建築物
  • 1つの建築物において特定用途が興行場・百貨店・集会場・図書館・博物館・美術館・遊技場・店舗・事務所・学校・旅館から1または2以上に使用される建築物
  • 1つの建築物において特定用途に使用される延べ面積が3,000㎡以上であること

3‐3.資格について

建築物環境衛生管理基準に基づいて衛生管理をするためには「建築物管理衛生技術者」の資格が必要です。建築物管理衛生技術者の資格を取得しなければ、空気環境の測定ができません。

4.建築物環境衛生管理技術者について

定められた建築物の衛生管理をおこなう建築物環境衛生管理技術者とは、一体どんな資格なのでしょうか。建築物環境衛生管理技術者の定義・必要性・就職先やメリットについて解説します。

4‐1.建築物環境衛生管理技術者の定義

建築物環境衛生管理技術者は建築物における環境衛生の維持管理・監督をおこなう役職です。国家資格の1つであり通称「ビル管理技術者」とも呼ばれています。建築物における衛生的環境の確保に基づき、特定建築物の所有者は資格を持っている人の中から建築物環境衛生管理技術者を選任しなければなりません。

4‐2.建築物環境衛生管理技術者の必要性

オフィスビルなど人が集まる建築物は衛生管理が大変です。だからこそ、特定建築物所有者は建築物環境衛生管理に詳しい技術者から意見を聞かなければなりません。建築物環境衛生管理技術者は建築構造・設備、室内環境・衛生、給排水、清掃、害虫・ねずみなどの防除、廃棄物などビル管理に関する幅広い知識を持っています。そのため、安全かつ速やかに建築物の衛生管理・維持ができるのです。

4‐3.建築物環境衛生管理技術者の就職先・メリット

建築物環境衛生管理技術者の就職先は主に、不動産・ビル管理会社・設備会社などです。テナントが多数入っている商業施設からオフィスビル、美術館と幅広い場所での衛生管理をおこないます。求人では「資格取得者歓迎」「資格取得手当」と資格所有者に対する優遇が記載されているでしょう。資格を持たない人よりも持っている人のほうが就職・転職しやすくなります。資格手当も発生するので給料面でも有利です。

5.建築物環境衛生管理技術者の試験概要

建築物環境衛生管理技術者になるには、試験に合格するか、または講習会を受けなければなりません。これから、受験資格や試験の概要、勉強法など詳しく解説します。

5‐1.受験資格

建築物環境衛生管理技術者の受験資格は以下の建築物の用途において環境衛生上の維持管理を2年以上経験された人に限ります。

  1. 興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場
  2. 店舗、事務所
  3. 学校(研究所を含む)
  4. 旅館、ホテル
  5. そのほか1~4までの用途に類するもの

5‐2.試験の概要

では、建築物環境衛生管理技術者の試験とは一体どんな内容なのでしょうか。試験日、会場、試験にかかる費用を解説します。

5‐2‐1.試験日

国家資格の建築物環境衛生管理技術者の試験は1年に1回、10月上旬の日曜日におこなわれています。試験時間は午前・午後にわかれており各3時間です。

5‐2‐2.試験会場

試験会場は札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市および福岡市です。各会場同じ日時で試験がおこなわれます。

5‐2‐3.試験にかかる費用

建築物環境衛生管理技術者の受験手数料は13,900円になります。消費税は非課税です。また、試験会場までの交通費、受験願書の送料代もかかるでしょう。

5‐3.試験の内容

建築物環境衛生管理技術者の試験内容は全部で7科目あります。建築物衛生行政概論、建築物の構成概論、建築物の環境衛生、空気環境の調整、給水および排水の管理、清掃、ねずみ・昆虫などの防除です。中でも空気環境の調整に関するは問題数が45問と多くなります。ほかの科目は15問~35問程度になるでしょう。

5‐4.合格率、難易度

毎年変動しますが、合格率はおよそ17%~23%です。2015年度は受験者数が9,827人に対し合格者は1,861人と合格率はおよそ19%でした。合格率が低いと難しいのではと不安になるでしょう。しかし、国家資格の情報サイトでは難易度が「普通」になっています。ほかの国家資格と比べると難しい試験ではありません。ただ、出題範囲が広いこと、受験者の平均年齢が高いこと、科目ごとの合格がないことが合格率を下げているのでしょう。

5‐5.免許の交付

もし、試験に合格した場合は免許の交付を申請しなければなりません。合格後、免状の申請用紙が届くのですぐに申請してください。決まった日にちまでに申請できない場合は無効になってしまいます。

5‐6.講習について

受講資格がある人に限り103時間の講習を受けて建築物環境衛生管理技術者の資格を得ることができます。ただし、受講資格は国家試験よりも厳しくなっており受講費用はおよそ11万円必要です。受講資格は以下の項目になります。

  • 大学または旧大学の理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学、獣医学の過程を卒業
  • 防衛大学校の理工学の過程を卒業
  • 海上保安大学校を卒業
  • 短期大学または高等専門学校、旧専門学校の理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学、獣医学の過程を卒業
  • 高等学校または旧中等学校の工業に関する学科を卒業
  • 学校教育法第56条の規定により大学に入学できる者、または旧中等学校を卒業

5‐7.申し込みについて

申し込みは書類を提出する形になります。受験に必要な書類は公益財団法人日本建築衛生管理教育センターでダウンロード可能です。受験願書の配布期間と書類の提出期間は決まっているので、できるだけ早めに提出しなければなりません。

公益財団法人日本建築衛生管理教育センター

5‐8.勉強法について

独学、専門スクール、通信教育などさまざまな勉強法があります。建築物環境衛生管理技術者の場合、出題範囲が広いのでコツコツと勉強を続けなければなりません。しかし、毎日仕事が忙しく疲れているとなかなか思うようにすすまないでしょう。そこで、おすすめしたいのが通信講座です。通信講座は自分のペースで勉強できます。テキストや参考書を選ばずとも重要ポイントを押さえた教材が手に入るのです。さらに、わからないところがあればメールで先生に尋ねることもできます。毎日忙しくて勉強する時間がない、自分のペースで勉強したい人はぜひチェックしてください。

6.建築物環境衛生管理技術者に関するよくある質問

建築物環境衛生管理技術者に関するよくある質問を5つピックアップしてみました。疑問に思うところがあれば、試験を運営している日本建築衛生管理教育センターに尋ねるといいでしょう。

日本建築衛生管理教育センター問い合わせ先

6‐1.建築物環境衛生管理技術者の講習会を受けられる免状とは?

歯科・獣医師・薬剤師をのぞく医師や1級建築士、第1種・第2種冷凍機械責任者、臨床検査技師、第1種~3種電気主任技術者など資格を持っている人は講習会を受けることができます。ただし、各免状によって実務経験の年数が決まっているでしょう。詳細が知りたい方は以下の建築物環境衛生管理技術者講習会ページをチェックしてください。

建築物環境衛生管理技術者講習会

6‐2.試験合格のための学習ポイントが知りたい

学習ポイントは「隙間時間を活用すること」です。たとえば、電車・バスでの通勤時間、持て余していませんか?あいている時間こそ、テキストや参考書を見て勉強できます。

6‐3.建築物環境衛生管理技術者の年収は?

建築物環境衛生管理技術者の年収はおよそ400万~500万円です。経験値やスキルがアップすればするほど、収入アップが期待できます。

6‐4.建築物環境衛生管理技術者に必要なスキルは?

建築物の衛生管理における知識はもちろんのこと、ビルの利用者やクライアントとのコミュニケーションも大切になります。コミュニケーション能力に不安な人でも人と接することで徐々に能力が高まるでしょう。

6‐5.建築物環境衛生管理技術者は更新が必要?

免状を取得するための申請は必要ですが、更新する必要はありません。建築物環境衛生管理技術者の資格を1度取得すれば生涯持ち続けることができる資格です。

まとめ

人が大人数集まる建築物では、建築物環境衛生管理技術者の力が必要です。建築物全体の衛生管理・監督をしながら安全な環境を維持し続けていかなければなりません。建築物環境衛生管理基準の知識を身につけておけば、技術者の資格が取得できるでしょう。ぜひ、自分の環境に合った方法で地道に勉強を続けてくださいね。

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