食品工場の監査とは? 主な種類と監査で気をつけるべきポイント
2022/10/14
食品工場の監査は、品質の向上と作業環境の改善をするために必要不可欠な監査です。しかし、具体的にどのような監査を行うのか、どのような種類の監査があるのかなど分からずに悩んでいる方は多いでしょう。目的や必要性をしっかりと理解することが、食品工場の監査を正しく行えるポイントです。
本記事では、食品工場の監査がどういうものなのか、詳しく説明します。
この記事を読むことで、食品工場の監査で気をつけるポイントも分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。
1.食品工場の監査とは?
まずは、食品工場の監査とは何なのか、基本情報をチェックしておきましょう。
1-1.製造現場をチェックすること
食品工場の監査とは何なのか、簡単に説明すると、実際の製造現場をチェックすることです。食品工場では、消費者など顧客に提供する食品を製造しています。食品の製造は、いろいろな原材料を使ったり、多数の製造工程を経て作られていたりするので、きちんと正しい方法で製造しているのかなどの確認が必要です。
1-2.生産トラブルを未然に防ぐ
食品工場の監査は、生産トラブルを未然に防ぐことも大きな目的となります。食製品に異物や細菌が購入するなどのニュースをよく聞きますが、これらの生産トラブルは食品工場の監査を徹底することで防げる事案です。品質の管理・製造工程の把握など、監査でしっかりとチェックしておけばトラブルが起きることなく、スムーズに製造できます。一度、生産トラブルが起きると顧客との信頼を失う恐れもあるため、どうすればトラブルを防げるのか常に考えることが大切です。
1-3.改善点を見つけることも大事
食品工場の監査は、ただ製造現場をチェックすることだけではありません。製造現場をチェックしてトラブルを未然に防ぐのはもちろんのこと、改善点を見つける目的もあります。たとえば、できるだけ製造コストを抑えた製造方法を見つけるなど、実際の製造現場を確認しながら模索することが大切です。維持することも大切ではありますが、より消費者や取引先に喜ばれるためにはどうすればいいのか、効率的に製造するためには何が必要なのかを考える役割も担っています。
1-4.リスクを予測する
改善点を見つけるためには、この製造過程でどのようなトラブルが起きやすいのか、リスクを予測することも大切なポイントです。リスクが予測できれば未然にトラブルを防ぐことができますし、より適切な改善点も導き出せます。そして、リスクを予測するためには、製造現場をしっかりとチェックしつつ、想像力も働かせなければなりません。自分たちでも予測できなかったトラブルが製造現場では起こりやすい傾向があるため、視野を広げてリスクを予測することが大切です。
2.食品工場の監査にはどんなものがあるのか?
ここでは、食品工場の監査における種類などを解説します。
2-1.第一者監査(内部監査)
食品工場における監査は、主に、第一者監査・第二者監査・第三者監査の3種類があります。まず、第一者監査(内部監査)とは、自社で実施する監査のことです。内部の人員で構成された監査員が、自社の工場をチェック数ネイル ことになります。第一者監査における目的は、標準作業がマニュアルどおりに行われているか、作業工程がISOの要件を満たしているかなど、基本的な内容を判断することです。また、効率的な方法を探したり、無駄な作業を見つけたりする目的もあります。
2-2.第二者監査
第二者監査は、親会社・委託先・取引先など自社と利害関係がある人員で構成された監査員が、製造工場をチェックすることです。利害関係のある会社が製造工場の状態をチェックすることで、組織のマネジメントシステムを再確認します。取引先の監査によってマネジメントシステムが評価され、改善点があればすぐに対処しなければなりません。監査を行う側としては、要求事項に対する適合性の検証が目的となります。
2-3.第三者監査
第三者監査とは、ISO(国際標準化機構)の監査員など自社と利害関係にない独立機関が行う監査のことです。独立した機関が監査を行うため、主にそれぞれの要求事項を満たしているか、食品安全について国際規格の取得・更新審査などが監査の対象となります。自社や利害関係にある企業だけの監査では、顧客・消費者に対する信頼を得ることはできません。けれども、第三者監査から高評価をもらえば、顧客に対して信頼を与えることができます。利害関係にない独立機関が監査するからこその意味があるのです。
2-4.主なチェックポイント
食品工場の監査における種類を説明してきましたが、具体的に何をチェックするのか分からない方は多いでしょう。監査では、主に以下のような項目をチェックすることになります。
- 工場内への入場
- 作業工程
- 5Sが正しく行われているか
- 廃棄物の処理
- 不良品の見分け方
それぞれについて詳しく説明していきましょう。
2-4-1.工場内への入場
工場内へどのように入っているのか、入場者をどのように確認しているのかを確かめます。工場内への入場は、異物を購入される原因にもつながるのでフードテロを未然に防ぐためには必要なチェック項目です。また、部外者が入らないようにするための対策や情報漏えいの防止策もしっかりと立てておかなければなりません。
2-4-2.作業工程
品質が一定になっているかを、作業工程のチェックで確かめます。作り方にムラが出たり、同じ作業でも人によって差が出たりしてしまうと、製品自体の品質が下がるので要注意です。同じ品質の食品を生産するためにも、工場側がどのような取り組みを行っているのか、メンテナンスの記録はしっかりとしているのかなどチェックされます。
2-4-3.5Sが正しく行われているか
工場内の衛生管理において、5Sはとても重要なキーワードです。食品工場でよく耳にする5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけという5つの言葉を意味しています。普段から工場を清潔な状態にすることで、工場で生産している食品の品質も向上するでしょう。5Sが正しく行われていない食品工場はトラブルが起きやすく、異物も混入しやすくなります。
2-4-4.廃棄物の処理
製品の生産効率をチェックするために、製造中に出た廃棄物を確認することもあります。どのような廃棄物がどのタイミングで出てくるのか、その廃棄物をどのように処理しているのかチェックされるでしょう。廃棄物の処理は衛生面にも影響をおよぼす部分なので、日ごろから従業員への教育を徹底しておかなければなりません。
2-4-5.不良品の見分け方
クレームや大きな事故を未然に防ぐために、不良品の見分け方もチェックされます。不良品をしっかりと分別できる状態にしなければ、大きな事故を招いてしまう可能性が高くなるからです。食品を出荷する前に、どのような方法で不良品を見分けているのか、1日にどのくらいの不良品が出るのかなどもチェックします。
3.食品工場の監査で気をつけるポイント
ここでは、食品工場の監査で気をつけるべきポイントを解説します。
3-1.工場内の衛生環境を整える
食品工場において、最も大切なのは衛生面です。消費者や顧客の口にするものを製造しているため、作業工程だけでなく、工場内の衛生環境も入念にチェックすることになります。よって、さまざまな監査項目の中でも、衛生環境は特に注意しておかなければなりません。前述したように、5Sがしっかりと行われているのかはもちろんのこと、以下のような内容を意識してください。
- 従業員の身だしなみをしっかりとチェックしているか
- 持ち込み禁止物のルールが定められているか
- 作業場とクリーンルームへの入室方法・手順は間違っていないか
- 施設内の清掃ルールを設けているか
- 防虫・防鼠の対策を実施しているか
- 設備・機器の洗浄ができているか
3-2.従業員の教育・指導も必要
どれだけ工場内が清潔な状態になっていたとしても、従業員が外部から異物を工場内へ持ち運んでしまえば意味がありません。工場内の衛生環境を徹底させるだけでなく、従業員に対する教育と指導も気をつけておきたいポイントとなります。たとえば、工場内に持ち込めないものや作業着の正しい着方を共有することなどです。また、業務の作業前と作業後に、身だしなみに関するチェックシートを設けるといいでしょう。
3-3.HACCP管理を徹底する
食品工場の監査では、HACCP管理を徹底することも大切なポイントです。HACCPとは、食品の安全性確保のために適した衛生管理手法のことを指しています。世界中で推奨されている内容となっており、日本でも食品衛生法の改正によってHACCP制度の義務化がスタートしました。大規模な設備を導入したり改修したりするのが目的ではなく、現在の環境に基づいた衛生管理の最適化がHACCP管理の目的です。主な内容としては、以下のようなものがあります。
- 衛生管理の効果を検証した後、必要に応じて改善する
- 衛生管理計画と手順書を作成する
- 実施状況の記録と保存を忘れない
- 従業員への周知を徹底する
具体的な内容に関しては、厚生労働省のホームページに「HACCPに基づく衛生管理」をチェックしてください。ちなみに、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」も掲載されています。
4.食品工場の監査に関してよくある質問
食品工場の監査に関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.作業工程のチェックポイントは?
A.品質を一定に保つために、食品工場がどのような取り組みを行っているかがチェックポイントです。たとえば、以下のような内容がチェックの対象となります。
- 加熱・冷却温度などの記録があるか
- 製造設備のメンテナンスがきちんとされているか
- 製造工程図(フローダイアグラム)が作られているか
- 現場の作業が製造工程図と一致しているか
Q.7Sとは?
A.整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・しつけ・清潔の7つで構成されている手法です。食品衛生管理において、5Sも存在していますが、この5Sに2つの要素が追加されているのが7Sとなります。5Sと7Sは同じ意味を持っていると思っている方は多いでしょう。けれども、実は目的が大きく違い、5Sは工場の生産効率を向上させること、7Sは食品製造環境を清潔に保つことが目的です。管理手法の工程はほぼ同じですが、目的が異なることを覚えておきましょう。
Q.食品工場の監査ではどのような指摘がされるのか?
A.農林水産業が公表している「FCP共通工場監査項目」をチェックしてみてください。工場監査を受ける側・実施する側が効率的に監査を進められるように、監査で求められる確認項目が整理されています。このチェックシートを使って、自社の品質管理状況をチェックしてみましょう。そのほか、さまざまな指摘事項の例が紹介されている「FCP共通工場監査項目に関する要求水準および監査手法」も要チェックです。
Q.品質異常が起きた際の対処法は?
A.被害を最小限に抑えるためにも、すぐ社内に情報を共有し、すでに流通してしまった製品を回収しなければなりません。品質異常の発生は、素早い対応がとても重要です。スムーズに社内で意思疎通ができるように、ホットラインを設置し、緊急連絡網の作成も行います。また、再発防止のためにも、なぜ事前に異常が検出されなかったのか、どの工程で問題が発生したのかなどの検証が必要です。
Q.生産トラブルやクレームを防ぐポイントは?
A.何よりもHACCPによる衛生管理を徹底することが大切です。また、食品工場は製品製造のために、さまざまな国から材料を仕入れているでしょう。食材の原産国・アレルギー情報などを間違えているとクレームにつながるため、内部監査でもしっかりとチェックしておかなければなりません。
まとめ
食品工場の監査は、製品の品質を維持するだけでなく、安心して高品質なものを消費者や顧客へ提供するために必要なことです。主な種類としては、自社で行う第一者監査、利害関係にある組織が行う第二者監査、そして利害関係のない独立組織による第三者監査があります。それぞれの監査をクリアすることで、消費者・取引先の厚い信頼を得ることができるでしょう。食品工場の監査は、製品をより良いものにするために必要不可欠です。
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