建築物衛生法とは?関連する資格取得に必要な情報を一挙紹介

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快適な生活を送るためには、安全・安心な建築物が必要不可欠です。安全・安心な建築物の維持管理や公衆衛生の向上を目的としている法律が「建築物衛生法」になります。将来、建築物関連の資格を取得したい人、衛生管理者として働きたい人は建築物衛生法について把握しておかなければなりません。

そこで、これから建築物衛生法とは何なのか、特定建築物の基礎知識やビル管理技術者など詳しく説明します。

  1. 建築物衛生法とは
  2. 建築物衛生法における特定建築物とは
  3. 特定建築物の維持管理、届け出、罰則について
  4. 建築物衛生法とホルムアルデヒド
  5. 建築物衛生法における国家資格とは
  6. 建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)について
  7. ビル衛生管理の講習会について
  8. 建築物衛生法に関してよくある質問

この記事を参考にすれば、建築物衛生法について知ることができます。そして、関連する資格取得のために必要な知識を習得し、試験対策ができるでしょう。


1.建築物衛生法とは

建築物衛生法関連の資格を取得するには、建築物衛生法について詳しく把握することが大切です。これから、建築物衛生法とは何なのか詳しく解説します。

1‐1.建築物衛生法の正式名称と通称

建築物衛生法の正式名称は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」です。ちなみに、建築物衛生法のほかにもビル管理法と呼ばれています。東京都ではビル衛生管理法ともいい、ビル管理における基本が記載されている法律です。

1‐2.建築物衛生法の歴史と概要

建築物衛生法は昭和45年に制定されました。平成14年には特定建築物の範囲見直しなど、建築物衛生法関連省令が改正されたのです。また、平成15年には建築物衛生法の施行規則の一部が改正されました。改正内容は特定建築物における飲料水水質検査項目の追加や特定建築物届出の内容などです。そもそも、建築物衛生法は多くの人が利用する建築物の維持管理・衛生的な環境の確保を図る法律になります。より良い環境を維持するには改正が必要なのです。改正の詳細については以下のURLから確認できますよ。

厚生労働省 建築物衛生のページ:http://ur0.link/xLnY

1‐3.建築物衛生法の目的、必要性

人が多く出入りする施設では、より良い衛生環境の維持が難しいです。だからこそ、明確な決まりや必要な事項を定めることで建築物における衛生的な管理ができます。つまり、建築物衛生法は公衆衛生の向上、および増進に役立てることが目的です。建築物衛生法がなければ建築物の安全衛生管理ができません。

1‐4.建築物衛生法が適用される場所

建築物衛生法が適用されるのは興行場、百貨店、事務所、店舗、学校など人が多く利用する建築物です。相当程度の規模に当たるものを「特定建築物」と定義しています。特定建築物がある場所すべてが建築物衛生法の適用範囲です。

2.建築物衛生法における特定建築物とは

建築物衛生法に関して「特定建築物」の知識は必要不可欠です。では、特定建築物とは一体どんな建物になるのでしょうか。

2‐1.特定建築物について

特定建築物の定義は以下の条件すべてに当てはまるものです。

  • 建築基準法に定義された建物であること
  • 1つの建築物において、興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、学校、旅館といった特定用途に1または2以上に使用される建築物
  • 1つの建築物において、特定用途に使用される延べ面積が3,000㎡以上

2‐2.特定建築物の種類

特定建築物の種類は使用用途によってわかれています。主に、興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館・美術館、遊技場、店舗、事務所、学校、旅館などです。人が一定以上利用する場所が特定建築物になりますね。たとえば、東京都庁も特定建築物の1つです。

2‐3.不特定多数が集まるが設定されない建物は?

不特定多数が集まる建築物はすべてが特定建築物に見えますよね。しかし、「特殊な環境」に当てはまる建築物はビル管理法から除外されるのです。たとえば、大規模なマンションや老人ホーム、病院が当てはまります。大規模マンションには多くの人が生活している建築物です。しかし、個々に管理する部分が多いため、建築物衛生法には当てはまりません。

2‐4.特定建築物に認定されるとどうなるのか?

特定建築物に認定されると使用開始から1か月以内に届け出をしなければなりません。届け出事項に変更があった場合も必要です。また、特定建築物の維持管理権を持っている人は建築物環境衛生管理技術者を選任する必要があります。

3.特定建築物の維持管理、届け出、罰則について

特定建築物の維持管理や届け出、罰則について説明します。建築物衛生法を把握するには必要な知識なので、ぜひチェックしてください。

3‐1.特定建築物の届け出とは

特定建築物と認定された場合、必ず都道府県の知事に対して届け出る必要があります。届け出事項は以下のとおりです。

  • 特定建築物の名称、所在地
  • 特定建築物の用途、構造、設備の概要
  • 特定建築物の特定用途および特定用途以外の面積
  • 特定建築物の所有者などの氏名、住所、法人の場合は名称、事務所の所在地、代表者の氏名
  • 建築物環境衛生管理技術者の氏名、住所、免許番号、検認している場合は名称と所在場所
  • 特定建築物が使用されるに至った年月日

3‐1‐1.届け出の目的、必要性

特定建築物の届け出は、きちんと衛生管理されているかどうか、衛生管理の資格を持っている人が選任されているかどうかなど確認するためのものです。人が多く利用する場所だからこそ、安心・安全を維持し続けなければなりません。もし、事故が起きれば大惨事になるでしょう。都道府県が特定建築物を把握するためにも届け出が大切になります。

3‐2.特定建築物の維持管理とは

特定建築物の維持管理は建築物衛生法に基づいておこなうことが義務づけられています。主に、空気環境、飲料水、雑用水、排水に関する設備の管理、清掃、ねずみなどの防除が維持管理の内容になるでしょう。各都道府県によって維持管理の決まりが定められています。

3‐2‐1.維持管理の目的、必要性

維持管理の目的は、安全・安心かつ快適な建築物を維持することです。建築物の衛生状態の維持だけでなく、より快適な環境になるための向上も目的としています。特定建築物に対する維持管理が詳細に定められているからこそ、多くの人が安心して利用できるのです。

3‐3.届け出、維持管理の義務主体は?

特定建築物の届け出や維持管理の義務主体はすべて特定建築物の維持管理権原者になります。権限を持っている人は届け出だけでなく、建築物環境衛生管理技術者を選任しなければなりません。そして、建築物環境衛生管理技術者によって維持管理ができているかどうか意見を尊重しながら監督させます。

3‐4.建築物環境衛生管理技術者の選任義務について

建築物衛生法において、特定建築物には必ず1人の建築物環境衛生管理者を置かなければならないと決められています。選任については直接権原者が指名する場合もありますが、雇用や他事業者への建築物総合管理の委託がほとんどです。委託された建築物総合管理事業者が選任することになります。

3‐5.建築物生成法における罰則とは

建築物衛生法に基づいていない、適切な維持管理がおこなわれていないと都道府県が判断した場合、特定建築物の管理権原者に対して罰則が与えられます。罰則内容としては維持管理の改善・必要な措置命令だけでなく、特定建築物の一部や関係設備の使用停止が下されることもあるでしょう。

4.建築物衛生法とホルムアルデヒド

安価で使用できる接着剤・塗料として注目を浴びているのが「ホルムアルデヒド」と呼ばれる物質です。しかし、ホルムアルデヒドは毒物および劇物取締法により医薬用外劇物に指定されています。そこで、建築物衛生法とホルムアルデヒドの関係について見ていきましょう。

4‐1.空気環境測定の定義と必要性

建築物衛生法において空調設備の管理や点検、実地状況を記録しなければなりません。建築物衛生法に基づきながら、空気環境測定では浮遊粉じん、二酸化炭素、温度、湿度などの管理をおこないます。2か月に1回の測定・記録が義務づけられているのです。きちんと測定・管理しなければ安全な空気が建築物内に行き渡りません。

4‐2.建築物衛生法における測量すべき物質とは

建築物衛生法において測量すべき物質は、浮遊粉じん、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流の6項目です。それぞれの項目に基準値が定められています。そして、問題視されているホルムアルデヒドの測定も途中からつけ加えられました。ちなみに、それぞれの基準値は以下のとおりです。

  • 浮遊粉じん:0.15mg/m3以下
  • 一酸化炭素の含有率:100万分の10以下
  • 二酸化炭素の含有率:100万分の1,000以下
  • 温度:17℃以上28℃以下、居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと
  • 相対温度:40%以上70%以下
  • 気流:0.5m/秒以下
  • ホルムアルデヒドの量:0.1mg/m3以下

4‐3.改正とホルムアルデヒドについて

平成14年度の改正案において、建築物衛生法の空気環境の調整にホルムアルデヒドのが追加されました。ホルムアルデヒドの測定基準は1㎥につき0.1mg以下です。ホルムアルデヒドの測定方法も細かく定められています。場所は各階の任意の居室、時間帯は通常の使用時間、測定箇所は居室中央部の高さ床上0.75m~1.20mです。ホルムアルデヒドの測定器に関しても、次々と指定する測定器が追加されています。指定測定器に関しては以下のURLを確認してください。

厚生労働大臣が指定するホルムアルデヒドの測定器:http://ur0.link/xLol

5.建築物衛生法における国家資格とは

建築物衛生法の維持管理に関する国家資格といえば、「建築物環境衛生管理技術者」です。通称、ビル管理技術者、ビル管理士と呼ばれています。ビル管理士は特定建築物において選任対象になり大規模・中規模建築物の管理者として働くことができるのです。主な業務内容は維持管理業務の計画から実施、測定・検査の実施と評価、問題点の改善や改善案の作成になります。

6.建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)について

国家資格の1つになる「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)」は、特定建築物に必要不可欠な存在です。これから、ビル管理技術者の定義や必要性、就職先・メリットについて説明します。

6‐1.ビル管理技術者の定義

ビル管理技術者は特定建築物の所有者・占有者などに対して意見を述べる力を持っています。法律によって意見の尊重義務があるため、所有者や占有者はビル管理技術者の意見を尊重しなければなりません。ビルや商業施設など大規模・中規模の建築物をより良い環境にするための資格です。

6‐2.ビル管理技術者の必要性

大規模・中規模の建築物を管理するには特定建築物に詳しい人が必要です。ほかの従業員をまとめ、指導する人がいなければ建築物の衛生を保つことができません。つまり、ビル管理技術者は建築物の環境・衛生・設備管理を維持する「要」になるのです。そのため、ビル管理に対する幅広い知識はもちろんのこと、周囲をまとめるマネジメント能力も必要になります。

6‐3.ビル管理技術者の就職先、メリット

ビル管理技術者の就職先は、主にビル管理会社になります。大規模・中規模の施設運営を委託している会社・事業所、または商業施設などを管理している企業になるでしょう。ビル管理技術者は国家資格の1つであり専門的な知識を持っているため、就職・転職に有利です。また、資格手当や昇給も期待できるでしょう。

7.ビル衛生管理の講習会について

ビル管理士・ビル管理技術者になるには国家試験の合格、または講習会を修了すれば取得できます。講習会は国家試験の受験資格よりも厳しい受験資格ですが、一体どんな内容になっているのでしょうか。

7‐1.ビル衛生管理の講習会とは

ビル衛生管理の講習会は受験資格がある者だけ、103時間におよぶ講習を受講すれば資格が取得できるものです。ちなみに、受験資格は以下のとおりになります。

  • 大学または旧大学の理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学または獣医学の課程を卒業
  • 防衛大学校の理工学の課程を卒業
  • 海上保安大学校を卒業
  • 短期大学または高等専門学校、旧専門学校の理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学または獣医学の過程を卒業
  • 高等学校または旧中等学校の工業に関する学科を卒業
  • 学校教育法第56条の規定により大学に入学できる者、または旧中等学校を卒業

受講期間はおよそ3週間、受講費用は108,800円と高額です。

7‐2.ビル衛生管理講習会の必要性

ビル衛生管理講習会では建築物衛生法に関連する講習科目を学ぶことができます。建築物衛生行政概論、建築物の構造概論、建築物の環境衛生、空気環境の調整、供水および排水の管理、清掃、ねずみ・昆虫等の防除です。103時間かけて学べるため、必要な知識が習得できます。

7‐3.申込先

ビル衛生管理の講習会は不定期に都道府県で実施されています。いつどこで開催されるのかわかりません。そのため、常に「公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター」のHPをチェックしてください。また、募集人員が決まっているので、できるだけ早めに申し込みをしたほうが安心です。申込先は大阪会場以外なら日本建築衛生管理教育センター、大阪会場は関西支部になります。

日本建築衛生管理教育センター:http://jahmec.or.jp/koushu/h28/nittei-kg.html

8.建築物衛生法に関してよくある質問

建築物衛生法に関してよくある質問を5つ集めてみました。ぜひチェックしてください。

8‐1.法定点検とは?

建築物衛生法第4条や第1条などでは、法定点検の頻度が記載されています。法定点検は特定建築物の維持管理をするために必要な検査のことです。たとえば、排水設備の清掃は6か月に1回、室内空気環境測定は2か月に1回と決まっています。

法定点検の頻度:http://www.shizubikyo.or.jp/tenken_02.htm

8‐2.ビル衛生管理者の合格率は?

ビル衛生管理者の合格率はおよそ17%~23%です。難易度は「普通」ですが、出題範囲が広いため合格率が低くなっています。

8‐3.ホルムアルデヒド測定にかかる費用はいくら?

絶対項目となったホルムアルデヒドの測定を業者に委託する場合、数万円必要になります。測定箇所が増えるほど金額が高くなるでしょう。

8‐4.ホルムアルデヒド測定時期とは?

ホルムアルデヒドの測定時期は新築、大規模修繕・模様替えをおこなった後になります。また、最初に迎える6月1日から9月30日までの期間中に1回測定しなければなりません。

まとめ

建築物衛生法は特定建築物の維持管理、衛生面の向上には大切なものです。建築物衛生法がなければ大規模・中規模建築物の維持管理ができません。ビル管理士として働きたい人は、必ず建築物衛生法の知識を身につけてください。きちんと必要な知識を身につけておけば、試験に合格できますよ。

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