非常放送設備とは?非常用放送設備に関する資格の取得方法も解説!

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火災や地震などの災害が起きたとき、いち早く自分の命を守らなければなりません。しかし、オフィスビルや商業施設といった不特定多数の人が集まっている場所では、すぐに混乱状態になります。そこで大きな役割を果たすのが「非常用放送設備」です。非常用放送設備を整えることで、多くの人の命を守ることができます。

そこでこの記事では、非常用放送設備とは何なのか、防災設備に関する資格や試験概要など詳しく説明しましょう。

  1. 非常用放送設備とは
  2. 非常用放送設備の設置について
  3. 防災設備に関する資格について
  4. 非常用放送設備に関してよくある質問

この記事を読むことで、非常用放送設備の基礎知識の習得と関連する資格に必要な情報を手に入れることができます。非常用放送設備について知りたい方や関連資格を取得したい方は、ぜひチェックしてください。


1.非常用放送設備とは

「非常用放送設備」という言葉を耳にしたことはあっても、詳しく知らない方が多いでしょう。非常用放送設備とは一体どんな内容になっているのか、概要や必要性などを説明します。

1-1.概要

非常用放送設備とは、万が一のときに建物内にいる人々に火災発生の警報を伝えるための設備のことです。何が起きているのか、これからどうすべきなのか避難誘導をおこなう大切な設備になります。また、非常用放送設備は、自動火災報知設備と連動しているため、自動的に音声警報音で知らせることができるのです。ただし、すべての建物に設置するわけではありません。劇場・公会堂・病院・ホテルなど不特定多数の人がいる建築物が設置対象になります。

1-2.必要性

火災などの災害が起きたとき、建物内にいる人々はパニック状態になるでしょう。パニック状態になればなるほど、冷静な対処ができなくなるものです。けれども、非常用放送設備の防災放送によって、人々を安全な場所へ避難誘導ができます。また、何が起きているのか把握できるため、冷静に判断できるのです。パニック状態による二次災害を防ぐことができるのも、非常用放送設備のメリットになります。特に、最近は地震による災害が増えてきました。緊急地震速報を取り込み、緊急放送用の機能が実装されている非常用放送設備もあります。

1-3.消防法について

非常用放送設備の設置基準などについては、「消防法」で詳しく定められています。消防法は火災を予防・警戒し、国民の生命・身体・財産を火災から保護するためにつくられた法律です。火災による被害の軽減や社会公共福祉の増進・安寧秩序の保持が目的になります。非常用放送設備に関しては、消防法の「第四章 消防の設備等」で記載されているので、ぜひチェックしてください。

消防法

1-4.非常警報設備との違い

似ている言葉に「非常警報設備」というものがあります。非常警報設備は、非常ベルや自動式サイレン・非常用放送設備などをまとめて表しているものです。非常事態を建物内にいる人に伝える役割を担っています。また、下記に非常ベル・自動式サイレン・放送設備に関してまとめているので、ぜひ参考にしてください。

  • 非常ベル:警報の音響装置として用いることが多い
  • 自動式サイレン:警報の音響装置の1つ。非常ベル・サイレンとともに起動装置・表示・音響装置・電源によって構成されている
  • 放送設備:スピーカーを利用した音声によって建物内の人々に通報・避難誘導をおこなう設備。
非常用放送設備は、消防設備の1つなんですね。
はい。迅速に施設な利用者を避難させるために必要な設備です。

2.非常用放送設備の設置について

非常用放送設備の設置は、消防法によって細かく定められています。設置する際は必ず消防法に基づいた設置基準を守らなければなりません。そこで、非常用放送設備の設置基準について詳しく見ていきましょう。

2-1.設置基準

非常用放送設備の設置が義務づけられているのは、消防法で規定された防火対象物内です。たとえば、劇場・公会堂・ホテル・病院・カラオケ店・飲食店・百貨店・旅館・学校などが挙げられます。防火対象物内になっているのは、ほとんどが20人以上収容できる場所です。また、放送設備は非常ベルまたは自動式サイレンと同等以上の音響を発する装置を附加した放送設備になります。非常放送設備の設置基準は、起動装置・表示・スピーカー・増幅器・電源で構成されており、それぞれ細かく定められているのです。収容人数や場所によっても設置基準が異なるため、事前に自治体のホームページで確認しなければなりません。以下のURLから、東京防災設備保守協会に記載されている設置基準が確認できるので、ぜひチェックしてください。

東京防災設備保守協会

2-2.設備について

非常用放送設備は、主にスピーカー・配線含む電源・表示・起動装置・増幅器などで構成されています。特に、警報や音声を発するスピーカーと配線基準・非常電源は重要です。それぞれどんな設備になるのか、詳しく説明しましょう。

2-2-1.スピーカーについて

非常用放送設備のスピーカーはアンプで増幅された電気信号を音に変換するものです。音質を重視する場所に使用されることが多く、スピーカーの種類によって適した設置場所が異なります。大まかに、「コーン型」「ホーン型」の2種類に分類され、駐車場や学校のグラウンドなど大出力を必要とする場所に設置することが多いです。また、放送設備を設置する環境によって、屋内型・防水型・防滴型・防寒型と種類があります。たとえば、雨が直接かかる場所は防水型、軒下などに設置したい場合は防滴型です。爆発性のある場所では防爆型、屋内に設置するのは屋内型になります。

2-2-2.配線基準や非常電源など

電源回路の対地電圧が150ボルト以下の場合は0.1メガオーム以上、150ボルト以上は0.2目がオーガム以上など配線基準が事細かく決められています。配線基準の詳細は、以下のURLから確認してください。

配線基準ページ

そして、非常用放送設備は非常電源を搭載しなければなりません。停電時に火災が発生したとしても支障なく作動し、避難を促すことが大切です。そのため、消防法では以下の内容が定められています。

  • 非常電源の容量は機器を10分以上作動できること
  • 常用電源が停電したときは、自動的に非常電源に切り替えられること
  • 常用電源が復旧しても、自動的に非常電源から常用電源に切り替えられること

2-3.非常放送の流れについて

設備を利用した非常放送の流れを紹介します。火災が発生したとき、感知器や発信機が反応して受信機に信号を送るのです。信号を受け取った受信機は非常放送設備の操作部になります。すぐさま非常放送設備を稼働させ、非常用設備起動によって「非常放送」が流れる仕組みです。非常放送が始まると同時に、人々の避難・誘導が始まります。非常放送が流れるときは、一般放送やローカルアンプを切断しなければなりません。

非常用放送設備は設置基準や設置機器が法律で定められているんですね。
はい。設置が義務づけられている施設は、法律に沿って非常用放送設備を設置しなければなりません。

3.防災設備に関する資格について

防災設備に関する資格は、主に「消防設備士」と「消防設備点検有資格者」の2つがあります。それぞれどんな資格なのか、試験内容とともに説明しましょう。

3-1.消防設備士について

消防設備士は消火器やスプリンクラー設備などの消火設備・警報設備・救助袋などの設置工事や点検整備をおこなう国家資格です。消防法に準拠しています。消防法によって定められている建築物は、非常用放送設備などの設置が義務づけられているため、消防設備士が必要です。

3-1-1.有資格者のメリット

消防設備士は、消防関連の設備の工事・点検に必要な知識を持っています。そのため、無資格者よりも有資格者の需要が高いのは当たり前です。有資格者の大きなメリットは、「転職・就職に有利」な点になります。有資格者を求めてる企業・会社は多いです。無資格者よりも採用される確率は高いでしょう。さらに、有資格者は「スキルアップ」ができ、「資格手当」が支給されるなど給与面でも大きなメリットを持っています。

3-1-2.受験資格

消防設備士は「甲種」と「乙種」の2つにわかれています。甲種は「指定区分に応じた消防用設備の工事・整備・点検」、乙種は「指定区分に応じた消防用設備の整備・点検」ができる資格です。甲種と乙種の違いは、‟工事ができるかできないか”になります。また、種類によって受験資格も異なるのです。乙種は誰でも受験できますが、甲種は細かく決められています。甲種の受験資格は主催の消防試験研究センターのホームページを確認してください。

消防試験研究センター

3-1-3.試験概要

全国各地で年1回から数回実施されています。都道府県によって回数が異なるので必ず「消防試験研究センター」のホームページで確認してください。試験は甲種・乙種ともに筆記試験と実技試験があります。甲種の筆記試験内容は「工場設備対象設備の構造・機能・工事・設備」「火災および防火」「消防関係法令」「基礎的知識」「消防用設備などの構造・機能・工事・整備」です。実技試験は「鑑別」「製図」になります。一方、乙種の筆記試験は「消防関係法令」「基礎的知識」「消防用設備などの構造・機能・整備」、実技試験は「鑑別など」です。

試験概要ページ

3-1-4.合格率

消防設備士の合格率は、甲種が30%前後、乙種が40%前後になっています。難易度は「やや易しい」になっているので、しっかり勉強すれば合格できる範囲です。また、合格基準は科目ごとに40%以上、全体の60%以上になります。

3-2.消防設備点検資格者について

消防設備を正しく設置し、適正な維持管理をするには‟消防設備点検資格者”が必要です。消防設備点検資格者とはどんなものなのか、詳しく説明しましょう。

3-2-1.概要

消防設備点検資格者は、消防用設備などの点検・設置をおこなう資格者のことです。消防用設備は定期点検が義務づけられています。また、定期点検の結果を消防機関に報告しなければなりません。適切な点検ができるのは専門知識を持っている「消防設備士」か、または「消防設備点検資格者」になります。

3-2-2.資格が取得できる人

消防設備点検資格者は第1種・第2種・特殊に分類されています。それぞれ点検できる消防用設備および特殊消防用設備などの種類が決まっているのです。資格を取得したい場合、15項目の受験資格のいずれかに該当しなければなりません。受験資格15項目のいずれかを満たす者が、資格取得できる講習を受けられます。15項目の内容に関しては、以下の日本消防設備安全センターのホームページで確認してください。

日本消防設備安全センター

3-2-3.講習概要

講習は第1種と第2種に区分し、それぞれ3日間実施されます。講習1日~2日目は、朝9:10~17:00近くまで講習があり、3日目の最後には、2時間の終了考査がおこなわれるのです。講習では、火災予防概論や消防法規・消防器具・建築基準法規など必要な知識を身につけます。修了考査は分類ごとに50%、全体の出題数の70%以上正解が必要です。

3-2-4.そのほか

消防用設備・特殊消防用設備は、たびたび変化し改正されています。そのため、最新の知識を習得するため、消防設備点検資格者は、資格取得後5年ごとに講習を受けなければなりません。再講習の受講期限を過ぎてしまうと、資格が喪失します。

消防設備士は非常用放送設備を設置したり点検したりできるんですね。
はい。取得しておいて損はないものです。

4.非常用放送設備に関してよくある質問

非常用放送設備に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

4-1.消防設備点検の報告書とは?

消防用設備などの点検は機器点検を6か月に1回、総合点検を12か月に1回おこなわなければなりません。そして、点検結果をまとめたものが報告書であり、消防署への提出が必要です。

4-2.消防設備の届け出は必要か?

消防設備の設置に関する工事は届け出が必要です。届け出は「着工届」「設置届」「使用開始届」があります。届け出に関してはお近くの消防署に問い合わせてください。

東京都消防署ページ

4-3.非常用放送設備の耐用年数は?

消防設備の更新も定期検査に含まれています。耐用年数は、自動火災報知機が10年~20年、非常警報設備が15年、防排煙設備の防火戸用ロックが7年~8年、消火器が8年です。ただし、種類やメーカーによって耐用年数が異なります。設置する前に必ず確認しておきましょう。

4-4.非常警報の複合装置とは?

表示灯や音響装置・蓄電池・起動装置などが一緒になっている非常警報設備のことです。その場で火災を知らせることができます。

4-5.消防設備士の過去問が知りたい

消防設備士の過去問は、消防試験研究センターのホームページからダウンロードできます。できるだけ、多くの過去問をといて試験対策をしておきましょう。

消防試験研究センター

まとめ

非常用放送設備は、不特定多数の人に火災・災害を知らせ、避難誘導をする大切な機器です。正しく作動することで、人命を守ることができます。非常用放送設備の設置や点検は、きちんと正しい知識を得た資格者がおこなわなければならないと法律で決められているのです。非常用放送設備に必要な資格を取得して、正しく取り扱いましょう。

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