決定版!!水質汚濁防止法の内容とは?特定施設は何を指すの?
2016/07/11
日本は世界有数の水に恵まれた国です。
しかし、一度水質が汚染されてしまえばそれを元通りにするのには、長い時間と手間と費用がかかります。
また、昭和40年代に日本各地で発生した公害は、水質汚染が原因なものが多かったのです。
そこで、今回は水質汚染を防ぐための法律、水質汚濁防止法についてご紹介しましょう。
水質汚濁防止法は、特に特定施設に勤務している方は目を通しおいた方がよいですね。
また、「知らなかった」では済まされない事態になる前に、法律をよく知り、対処法を覚えておく必要があります。
公害防止管理者を目指す方も、ぜひこの記事を読んでみてください。
1.水質汚濁防止法とは?
水質汚濁防止法とは、1971年に施行された公共用水域の水質汚濁の防止に関する法律。
「公共水域」とは、河川や湖沼、湾港など公共利用される水域のことです。
これらの水域の水は飲料のほかに、農業や漁業にも使われます。
つまり、公共水域が汚染されてしまえば、人が生活できなくなる可能性も高くなるのです。
昭和30年代~40年代前半の高度経済成長期には、たくさんの工場が建設されてその排水がそのまま河川に流されました。
また、生活排水もほとんどが未処理のまま河川に放出され、水質汚染の原因になっていったのです。
水質汚染が進めば前述したように農業や漁業もダメージを受けます。
また、放出される汚染物質はわずかでも、食物連鎖によって毒性が濃縮されることも珍しくありません。
さらに、一度水質が汚染されてしまうと回復までに長い時間と費用と手間がかかります。
また、地下水が汚染されてしまえば土壌汚染にもつながるでしょう。
そのため、水質汚濁防止法は、「工場および事業場から公共用水域に排出される水の排出。
および地下に浸透する水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進する」ことも目的としています。
また、重要なのは工場などから排出された汚水や廃液が原因で健康に悪影響が出た場合、責任の所在を明らかにすることにより、被害者の保護を図ることも目的としているのです。
水質汚濁防止法は、水質汚濁防止法施行令で指定された「特定施設」に対して施行されています。
2.水質汚濁防止法の内容について
この項では、水質汚濁防止法の内容をもう少し詳しく紹介していきます。
特定施設や特定設備や、規制される物質についてもご説明していきましょう。
2-1.特定施設って何?
水質汚濁防止法は、水質汚濁防止法施行令で指定された特定施設に施行されます。
この特定施設とは、人の健康を害する恐れのあるもの、または生活環境に対して害をもたらす恐れのあるものを含んだ水を流す施設のこと。
そして、ダイオキシン類を含む廃液を排出する施設も当てはまります。
具体例をあげると、炭坑や鉱山施設・養豚や牧畜など家畜を飼育する施設・工場などです。
もっと具体的に知りたい方は、各自治体の水道局のホームページをご覧ください。
ちなみに、東京都の水道局ではホームページ内に施設の一覧が記されています。
また、特定事業所とは、ダイオキシンやカドミウムなどを含む廃液や汚水を排出恐れのある設備のことです。
2-2.健康項目って何?
水質汚濁防止法における健康項目とは、体内に入ると健康に被害が出る恐れがある物質のことです。
カドミウムやダイオキシンが代表例ですが、このほかにも鉛・水銀・有機リン系化合物などが該当します。
どれも水の中に放出されてしまえば、最悪公害病の原因にもなるのです。
2-3.生活環境項目とは
生活環境項目とは、特定施設の水の汚染状態を示す項目です。
水質汚染防止施行令の3条がそれにあたります。pH(水素イオン濃度指数)・BOD(生物化学的酸素要求量)・COD(化学的酸素要求量)・浮遊物質量、大腸菌群数などの項目があるのです。
これの規制対象は、排水量が一日平均50立方メートル以上になっています。
また、総量規制とは、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海に面した指定地域特定施設の排水の規制となっているのです。
2-4.地下浸透水の規制とは
特定施設が排出する健康項目が定めた有害物質が地下へと浸透するのを禁止する項目です。
健康項目に定められた有害物質が土壌を汚染すれば、地下水まで汚染される可能性が高いでしょう。
そのため、たとえ水源の近くにない施設でも地下に染みこまないように処置をしなければなりません。
3.公害防止管理者とは?
さて、このようにざっと水質防止汚染法について説明してきましたが、水質汚染を防ぐためには危険度の高い物質を使っているところほど、定期的な検査などが必要です。
しかし、水質検査は誰がやってもよいというわけではありません。「公害防止管理者」という資格が必要です。
この項では、水質の検査や公害防止のための対策を行える「公害防止管理者」についてご説明します。
3-1.公害防止管理者とは、どのような資格?
公害防止管理者とは、その名の通り公害を防止する職務を行える資格です。
公害は、一度起きてしまうと手遅れになります。
そのため、水質、大気の状態などを定期的に検査し、公害の発生を防止する必要があるのです。
水質汚濁防止法では、特定施設に公害防止管理者を選任し、定期的に水質の検査をするように義務付けています。
3-2.水質汚濁防止法の中で定められている公害防止管理者とは?
水質汚濁防止法の中で言及されている公害防止管理者は、水質関係公害防止管理者になります。
第1種~第4種まであり、それぞれ技術的事項を管理できるところが異なり、数字が小さいほど大規模な施設の水質検査や管理ができるのです。
ちなみに、地下浸透水を浸透させている工場で技術的管理が行えるのは、水質関係第2種公害防止管理者になります。
3-3.公害防止管理者の職務と義務とは?
前述したように、水質汚濁防止法では、特定施設で定期的な水質検査を義務付けています。
この水質検査を行い、その結果に基づいて公害を防止するための技術的措置を行うのが、公害防止管理者の職務です。
また、公害防止管理者は水質検査の結果が基準値を超えた場合、速やかに企業の経営者などにその旨を伝え、対策を立てなければなりません。
公害防止管理者から報告を受けた工場の責任者や経営者は、早急に水質汚濁をこれ以上広げないように対処します。
必要ならば施設の一時停止も視野に入れましょう。
3-4.公害防止管理者が必要な施設とは?
公害防止管理者が必要な施設とは、水質汚濁防止法に定められた特定施設です。
日本全国にたくさんあるでしょう。
しかし、需要がある割には、公害防止管理者は知名度がまだまだ低く、有資格者が少ないのです。
そのため、資格手当をつけるなどして優遇する企業も多いでしょう。
公害防止管理者の資格は学生でも取れるので、就職にも有利です。
もちろん、社会人が取得すれば転職するときの大きな武器となるでしょう。
4.公害防止管理者の資格取得の方法
この項では、公害防止管理者の資格取得の方法をご紹介していきます。
公害防止管理者は種類が多く、申し込みのときなどに混乱しがちです。
この項をしっかりと読んで参考にしてください。
4-1.公害防止管理者の資格取得の方法
公害防止管理者の資格を取得するには、大きく分けてふたつの方法があります。
ひとつは、試験を受験して合格する方法。受験資格はありませんので、誰でも挑戦できます。
そして、もうひとつは3日間の認定試験を受けた上で修了試験に合格する方法。
こちらは、技術士や衛生管理者などの資格がなければ受講資格がありません。
また、資格によって認定講習で取得できる水質関係公害防止管理者の資格の種類は異なります。
詳しくは、産業環境管理協会のホームページで確認してください。
認定講習を受講したい場合は、まず申し込みをして協会の審査を受けます。
その後、講習受講が認められたら、改めて本申し込みをしてください。
前述したように講習は3日間ありますので、必要ならば有給を申し込みましょう。
4-2.水質関係公害防止管理者の試験内容とは?
水質関係公害防止管理者の試験は、全種類共通の科目と種類特有の科目があります。
- 公害総論
- 水質概論
- 汚水処理特論
ここまでが、共通科目です。 - 水質有害物質特論
- 大規模水質特論
この2科目が種類特有の科目になります。
合格基準は各科目で60%以上です。
なお、すでに第1種~第4種のうちでどれかを取得しており、新しい種を取得したい場合は、同一科目を3年間まで受験が免除されます。
ですから、複数の種を取得したい場合は、できるだけ3年以内に受験しましょう。
4-3.試験までの流れ
公害防止管理者の試験は、年に一度秋に行われます。
平成28年度の試験は10月2日です。
まだ申し込みを受け付けているので、まだ申し込んでない方は早めに申し込んでください。
試験の申し込みは書類でも産業環境管理協会のホームページからでも行えますが、ホームページからの申し込みの方が簡単です。
詳しいマニュアル等も書かれているので、落ち着いて申し込みましょう。
公害防止管理者は資格の種類が多く、水質関係公害防止管理者だけでも4種類あります。
間違えて申し込んでしまった場合でも変更は可能ですが、時間がかかるのです。
ですから、送信ボタンを押す前に何度も見直してください。
なお、団体でも申し込めますので、会社で複数の受験者がいる場合は団体で申し込んだ方が簡単です。
4-4.合格したら
試験に無事に合格すると免状が交付されます。この免状に更新などの必要はありません。
大切に保管しておきましょう。
紛失・破損・住所氏名の変更があった場合は、産業環境管理協会で再発行や免状の書き換えが必要です。
なお、免状は共通試験免除の証明にも使えます。
4-5.合格をつかみ取るための勉強法
公害防止管理者の試験対策は、産業環境管理協会も行っています。
添削込みの通信教材を販売していますので、基本的にはそれを利用しましょう。
試験の主催をしているところなので、問題に変更があった場合なども素早く対処してくれます。
しかし、必ずこの通信教材を使わなければ合格できない、というわけではありません。
自分には合わないなと思ったら、民間の業者の通信教材や参考書を利用しましょう。
いろいろな業者が通信教材を出しているので、資料などを取り寄せて比較していてください。
自分に合ったテキストや通信教材を使うのが一番です。
また、勉強は週末にまとめて行うより、毎日続けましょう。
週末に数時間勉強するより、毎日30分勉強した方が力がつきやすいのです。
仕事で忙しくても30分なら時間が作れるでしょう。
公害防止管理者の難易度は「普通」ですが、特別に問題が易しいわけではありません。
予備校などで特別なテクニックを習わなくても合格できるという意味です。
5.水質汚濁防止法に関するよくある質問
Q.自分の職場が特定施設にあたるかどうか確かめる方法はありますか?
A.各自治体の水道局に問い合わせてください。
排水量や排出される恐れのある物質を申請すれば、該当するかどうか教えてくれます。
Q.水質汚濁防止法の特定施設には該当しませんが、汚染物質を使っているところはありますか?
A.あります。そのため、各自治体で独自の規制条例を設けてるのです。
Q.学生で公害防止管理者の資格を取得できるでしょうか?
A.もちろんです。就職に有利になる可能性が高いので、機会があれば取得しておきましょう。
Q.協会の通信教材を申し込まないと合格できないのでしょうか?
A.そのようなことはありません。自分に合った通信教材を使ってください。
Q.複数の資格を取った方が有利でしょうか?
A.有利ですが無理してはいけません。まずは職場で公害防止管理者として働くために必要な資格を取得しましょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は水質汚濁防止法についていろいろとご紹介しました。
公害が起きてからでは遅いのです。検査や社員教育をしっかりと行いましょう。
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