生物膜法の特徴や原理は? メリット・デメリットと共に紹介

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私たちが水や空気を使って生活している限り、どうしても汚れが発生します。
ですから、それを取り除く技術も発達してきました。
一昔前は化学物質を利用する方法が一般的でしたが、今では微生物によって汚れを分解してもらう方法が主流です。
そこで、今回は生物膜法という汚れを除去する方法の仕組みや特徴をご紹介します。
微生物を使った汚れを除去する方法はいくつかの種類がありますが、生物膜法はどのようなメリットがあるのでしょうか?
答えはこの記事を読めばわかりますよ。

  1. 微生物を使った汚れを除去する方法とは?
  2. 生物膜法の種類とは?
  3. 生物膜法のメリットとデメリットとは?
  4. 浮遊生物法と生物膜法、どちらを選ぶべき?
  5. おわりに

1.微生物を使った汚れを除去する方法とは?

有機物が原因の汚れは、それを食べる微生物を利用することで除去できるのです。
現在では、主に水質の浄化に利用されています。
この項では、微生物を使った汚れを除去する方法の一例をご紹介しましょう。

1-1.浮遊生物法

浮遊生物法とは、汚れた水の中に好気性(空気を好む)微生物と空気を入れて、かき混ぜる方法。
水中に放たれた微生物は、有機的な汚れを食べて水をきれいにしてくれるのです。
化学物質を使った汚れを除去する方法に比べて人体に無害ですし環境にも優しいので、現在は多くの浄水設備で使われています。
浮遊生物法は、微生物の管理が容易で処理効率がよい、というメリットがあるのです。
しかし、その一方で嫌気性(空気を嫌う)微生物は使えなかったり、汚れを食べた微生物が沈殿してできる「汚泥」を定期的に処理したりしなくてはなりません。
また、浮遊生物法の場合は菌を活性化するために、ある程度のエサが必要です。
ですから、汚れの少ない水を浄化させるのにわざわざ汚染物質を入れなければならない、ということもありました。

1-2.生物膜法

さて、今回ご紹介する生物膜法も同じように微生物を利用して水質を浄化する方法です。
浮遊生物法との違いは、微生物を特定の担体に張りつけて、浄化槽の中に入れます。
こうすると、担体の表面に好気性菌が繁殖し、担体の中の方で嫌気性菌が繁殖できるのです。
ですから、複数の菌を同時に水中に入れることができます。
さらに、汚染物質を食べた微生物を別の微生物が食べてくれるので、汚泥が少なく汚染物質が一時的に減っても、微生物が全滅することはありません。
そのため、汚染の状態が時期によって変わる水をきれいにするのに向いているのです。

2.生物膜法の種類とは?

生物膜法の原理は、微生物のついた担体を水中に入れることです。
この、「微生物を水中に入れる方法」にいくつかの種類があります。
一例をあげると接触ばっ気法と散水ろ床法です。
接触ばっ気法とは汚水を浄化槽などにためておいて、その中に担体に付着させた微生物を沈める方法。
もうひとつの散水ろ床法とは、微生物を付着させた担体を床の上などに並べておいて、そこに汚水を散水する方法です。
散水ろ床方は流水の負荷変動に強いうえに温度変化の影響も受けにくく、建設費が安いというメリットも大きいものでした。
しかし、汚水が空気に触れてしまうので臭気やハエが発生してしまうことも珍しくなく、残念ながら現在はほとんど行われていません。
また、このほかにも「接触酸化法」や「回転生物接触法」などがあります。

3.生物膜法のメリットとデメリットとは?

では、生物膜法のメリットとデメリットは何でしょうか?
この項で、その一例をご紹介します。

3-1.生物膜法のメリット

前述したように、生物膜法は汚染水の負荷流動に強いです。
水質の汚染は季節や温度によっても異なります。ですから、浮遊生物法を利用しているとエサ不足で微生物が死んでしまうこともありました。生物膜法は、汚れを食べてくれる微生物と、その微生物をエサにする微生物が一緒に繁殖させられます。
ですから、生物膜法の方が汚れの少ない水もよりきれいにできるでしょう。
また、汚泥の処理も浮遊生物法に比べれば回数を少なくできます。
汚泥がたまりやすいと、浄化槽もあっという間にいっぱいになってしまうでしょう。
さらに、水中の汚泥を取り除くには、手間も費用もかかるのです。

3-2.生物膜法のデメリット

生物膜法のデメリットは、浮遊生物法に比べて水質浄化のスピードが遅いということ。
浮遊生物法は、エサさえあれば水中に際限なく微生物が増加します。
しかし、浮遊生物法の場合は微生物が担体の表面しか繁殖できません。
より多くの微生物が繁殖できるように担体の形状を工夫したとしても、浮遊生物法に比べると微生物の数は少なくなります。
さらに、汚泥が完全に発生しないわけではありません。
浮遊生物法と違って、汚泥が担体に付着するために、定期的に担体を引き上げて洗浄してあげなくてはならないのです。
また、大量の汚水を処理しようと思った場合は、設備も大がかりになるでしょう。
そのため、浮遊生物法に比べると、費用もかかりがちです。

4.浮遊生物法と生物膜法、どちらを選ぶべき?

浮遊生物法と生物膜法は、ご紹介したようにどちらもメリットとデメリットがあります。
ですから、汚水の質や量を見て選ぶとよいでしょう。
たとえば、汚染が強い水を大量に浄化しなければならないという場合は、浮遊生物法の方がメリットは大きいです。
汚泥を定期的に取り除かなければならないという手間はありますが、微生物を水中に入れて常に空気を送り続ければ、水はきれいになっていくでしょう。
逆に、汚染の様子に波がある水の場合は、生物膜法の方が便利です。
また、担体もかきがらなど産業廃棄物を再利用する方法もあります。
ですから、担体が安く手に入る場所ですと、大がかりな設備を安く作れたりもするでしょう。
そして、大切なのが、管理者です。
微生物を利用した水質の浄化は、効果が一定ではありません。
微生物が元気よく活動していれば水質はより早くきれいになります。
逆に、微生物の元気がなくなれば、水質の浄化がなかなか進みません。
ですから、温度や水の状態や水中の空気の濃度、さらに汚泥の状態などを細かくチェックできる管理者が必要でしょう。
そのため、エコだからというイメージだけで導入を決定すると、手間ばかりかかることになります。
導入を検討している企業は、すでに導入している場所に見学に行くなどしてコストや手間と採算がつり合うか検討してください。

5.おわりに

いかがでしたか?
今回は生物膜法の原理や特徴をご紹介しました。
微生物もいきものです。ですから、元気よく動いてもらうにはそれなりのお世話が必要でしょう。
また、生物膜法は汚泥の処理を怠ると、異臭や害虫が発生しやすくなります。
浮遊生物法と違って、汚水と空気が触れることも多いので害虫にとっては繁殖しやすいのです。
水質を浄化するためにそれほど人手がさけない、または管理するノウハウがないという場合は化学物質による水質浄化をした方がよい、というケースもあります。
とはいえ、現在は浄水場の多くで微生物による水質浄化が行われているのです。
さらに、浄化槽や生物膜法を使った浄化設備を製造、販売している業者も多いので、ノウハウはいくらでも学べるでしょう。
汚水の量や質、さらに負荷の数値をよく調べて、浮遊生物法か生物膜法のどちらを導入するか決定するとよいですね。

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