無線従事者の資格・選任について4項目で徹底解説!

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無線従事者として働くとき、資格を所持していれば良いわけではありません。無線従事者が扱うのは目には見えない“通信”です。日常を便利にすることもできれば、悪用することで多大な被害をもたらすこともできてしまいます。通信機器・設備を扱うには大きな責任があり、「この者が責任を持って従事している」と国に報告する必要があるのです。しかし、選任義務と聞いてもピンとこない方もいることでしょう。そこで、今回は無線従事者の選任義務について4つの項目で簡単にまとめてみました。記事は2017年版。1月に書かれた最新のものです。

  1. 無線従事者とは
  2. 無線従事者資格の種類
  3. 主任無線従事者の選任義務について
  4. 無線従事者の選任届けについて
  5. 無線従事者の選任にかかわるよくある質問
  6. まとめ

記事を読み終わるころには、無線従事者の資格と選任義務について正しく理解できます。選任報告について全くわからない方も、かみ砕いてまとめていますので安心してご覧ください。


1.無線従事者とは

最初の項は無線従事者の基本を押さえておきましょう。なぜ無線従事者の資格が必要なのか、どういった職務に就いているのかといった情報を、順を追って解説します。

1-1.無線従事者とは

「無線電信」「無線電話」など、電波の送受信をおこなう無線設備の操作・監督に就く者を“無線従事者”と呼びます。電波法に基づいた国家資格です。最近では、ドローンを操作する方にも無線従事者の資格を必要とするか検討されており、業務独占資格の特性から注目を浴びています。

1-2.資格概要

1990年に電波法が改正され、無線従事者は陸上・海上・航空の分野に分けられました。現在は8つの種類があります。無線従事者を名乗れるのは“総務大臣の認可”を受けた者に限り、無許可で無線従事者と同等の作業をおこなった場合は違法です。

1-3.必要性

通信機器が発展した昨今、無線設備の操作を間違うと生活に大きな影響を与えます。また、1つの無線設備が狂うことで、ほかの重要な通信を混乱させる可能性があるため、正しい知識と技術を持つ者の選任は欠かせません。

1-4.職務

前提として、無線従事者といっても大きく分けて8種類、細分すると23種類の資格があります。中には趣味の分野にとどまる資格もあるため、無線従事者という括(くく)りでも就ける職務は共通していません。たとえば、“総合無線通信士”“陸上無線技術士”であれば、携われる業務も多岐にわたるため、国家公務員や放送局に就ける可能性もあります。一方、“アマチュア無線技士”は趣味における資格であり、就職には向きません。そのほか、無線従事者は下記の職務に就いている方がいます。

  • 警察官
  • 航空管制官
  • パイロット

2.無線従事者資格の種類

無線従事者の資格について一度おさらいしておきましょう。ご自身の持つ無線従事者の免許がどんな分野に当てはまるのか、ぜひ見てみてください。

2-1.資格の種類

無線従事者の資格を下記に挙げますのでご覧ください。同名でも携わる内容によって1~4級まで用意されている資格もありますが、説明は最上級の1級として述べます。

2-1-1.総合無線通信士(1~3級)

無線通信士の中で“最高資格”です。携われる範囲も陸海空問わずに幅広く、基本的には、外洋航行船舶で大規模な通信設備を操作・監督します。なお、モールス通信術をはじめ、地理にも精通している必要があり、資格の取得は容易ではありません。

2-1-2.陸上無線技術士(1~2級)

放送局用の大電力設備など、陸上にある大規模な無線設備の操作・監督をすることができます。業務の経歴によっては中学や高校の教員免許も取得可能です。

2-1-3.陸上特殊無線技士(1~3級)

基本的にマイクロ波を用いた“中継設備”を操作する資格です。操作する無線設備には“電波の質”に影響を与えるものもあるため、ほかの特殊無線技士と比べると試験の難易度は高い傾向にあります。

2-1-4.海上無線通信士(1~4級)

大型外洋船舶規模通信設備の操作・監督を許可されていますが、モールス通信は扱えません。船舶関係でしたら陸上にある無線設備も操作できます。

2-1-5.海上特殊無線技士(1~3級)

船舶に備え付けられたレーダー無線設備の操作が許可されています。そのほか、外にある転換装置であっても、ほかの電波や質に影響を与えないものであれば操作可能です。GMDSS(世界海洋遭難安全システム)に対応しているため、ほかの特殊無線技士とは異なり、試験に英語が出題されます。

2-1-6.航空無線通信士

航空機の中にある無線設備、または運行管理などをおこなう無線設備を操作可能です。主に航空機のパイロット・航空管制官が保有する資格で、通信設備の操作・監督をしています。航空業界では最高の資格です。第一級総合無線通信士と同等に扱われます。

2-1-7.航空特殊無線技士

「個人・企業が持っている航空機」または「航空機を管理する無線設備」の操作に携われます。

2-1-8.レーダー級海上特殊無線技士

海岸に敷設されたレーダー用の通信設備、または船舶にあるレーダーの操作が可能です。独立した資格ではありますが、海上特殊無線技士の2級があれば業務内容はカバーできるため、あまり需要はありません。

2-1-9.国内通信級陸上特殊無線技師

国内および陸上に敷設された通信設備を操作できる資格です。扱える無線設備に制限はほぼありませんが、アマチュア無線設備の操作は許可されていません。

2-1-10.アマチュア無線技士(1~4級)

アマチュア無線設備の操作が可能です。ただ、空中線電力は1kw以下と規定されています。

3.主任無線従事者の選任義務について

無線従事者について解説するうえで、“主任無線従事者”の存在は欠かせません。選任義務とその必要性について解説します。

3-1.主任無線従事者とは

電波法第40条により、無線設備の操作を監督する無線従事者を“主任無線従事者”と呼びます。主任無線従事者に選任されると、半年以内に定められた講習を受ける必要があるので忘れてはいけません。また、講習が終わっても5年以内というサイクルで講習を定期的に受ける義務があります。

3-2.選任義務とは

そもそも“選任”とは特定の者を選んで任に就かせることです。選任義務が発生するケースは、主に重要設備の操作や人の生活にかかわる分野に携わることが多くなります。知識のない者には決して任せられません。したがって、基準を満たした専門家を配置するよう法律で定めているのです。

3-3.選任基準

大前提として、主任無線従事者にアマチュア無線技士は選任できません。また、選任する際、対象の無線従事者は下記の条件を満たす必要があります。

  • 携わる通信設備の有資格者である
  • 過去5年間のうちに実務経験が3か月以上ある
  • 無線局で働くことを禁止されていない、または停止期間を終えて3か月経過している
  • 電波法に違反するなどして行政処分を受けた者は、刑の終わりから2年経過している

なお、主任無線従事者がいれば、無資格者であっても通信設備を操作可能です(主任無線従事者が所持する資格の範囲に限ります)。

3-4.目的

通信設備には操作・監督する人が必要です。ただ、免許制であるため、必要なときに有資格者がいるとも限りません。そこで、無線従事者が確保できない場合でも通信設備を支障なく運用できるように、主任無線従事者の選任が採用されました。つまり、主任無線従事者は、無資格者でも通信設備を操作できるように考案された肩書きともいえます。

3-5.いつだれが届け出るか

主任無線従事者の選任は“免許人(無線局の免許を受けた者)”、または登録局の使用者などがおこないます。選任・解任したときは速やかに総務大臣へ届け出てください。なお、選任した者は、6か月以内に主任無線従事者に講習を受けさせる必要があります。

4.無線従事者の選任届けについて

最後の項は実用編です。無線従事者をどのように選任報告するのか、必要書類から注意点まで併せて解説します。

4-1.届出先と提出方法

無線従事者の届出は電子申請には対応していません。総務省あてに提出(郵送)します。放送部・無線通信部があるため、選任・解任をおこなう無線局を所管している部署を明記し、送付してください。(PDF形式

4-2.必要書類

インターネットなどから“無線従事者選解任届の様式”をダウンロードしてください。免許証の番号・氏名などの必要項目に記載し、この用紙を1部総務省に送付します。

4-3.選任義務を違反するとどうなるか

「届出をしなかった」「虚偽の届出をした」という場合、30万円以下の罰金を払う必要があります。もしやむをえない理由で選任報告ができない場合は、その旨を総務省に伝えて遅延の許可を受けてください。

4-4.注意点

無線従事者の免許証を紛失、または破ってしまった場合、できるだけ早めに再交付を受けてください。主任無線従事者に選任される場合は特に要注意です。郵便局などで国の収入印紙(2200円)を購入し、申請書・証明写真・返信用の封筒を同封して規定の通信局に送付します。詳細は総務省のホームページをご覧ください。

5.無線従事者の選任にかかわるよくある質問

この項ではインターネットを介して寄せられるお問い合わせ内容をまとめてみました。無線従事者の選任についてお悩みの方は参考にしてみてください。

Q.無線従事者の資格を持っていれば、だれでも主任無線従事者の選任を受けることができる?
A.アマチュア無線技師では選任を受けることはできませんが、有資格者であれば基本的に問題ありません。ただ、記事で解説した条件に該当している必要があります。

Q.主任無線従事者は何人配置しないといけないのでしょうか?
A.「船舶に○○人乗っていれば、○○人選任する必要がある」といったことは、法令上でも明確に基準を設けられていません。主任無線従事者の数は免許人の判断に一任されています。

Q.主任無線従事者1人に対し、いくつまで通信機器の監督を許可されているのでしょうか?
A.基本的に制約はありません。ただし、無線局が離れて設置されている場合、主任無線従事者はその開設場所ごとに定める必要があります。

Q.主任無線従事者の監督があるとはいえ、無資格者には通信設備の操作に制限はないのでしょうか?
A.主任無線従事者が持っている資格の操作が可能です。つまり、主任無線従事者がその場に敷設された通信機器をすべて扱える免許人であれば、無資格者であってもすべて操作できます。

Q.主任無線従事者が転勤を理由に解任され、転勤先でまた選任を受けた場合の講習はどうなるのでしょうか? 半年以内ですか? それとも5年でしょうか?
A.解任の日から1か月以内の選任であれば、5年以内のサイクルで問題ありません。

6.まとめ

最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます。無線従事者の資格・選任義務について解説してきましたが、いかがでしょうか? 選任報告は義務ですので絶対に怠ってはいけません。わからないことは所轄の総務省に問い合わせ、選任後は速やかに届け出るようにしましょう。

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