水質汚濁防止法とはどんな法律?特定施設に指定されるところとは?

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水質汚濁防止法とは、文字どおり水質の汚濁を防止する法律です。
水が汚染されれば、私たちの生活に重大な影響が出るでしょう。
今回は、水質汚濁防止法とそれが適用される特定施設についてご紹介します。
水質汚濁をする危険がある場所というと、工場を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、それ以外にも水質汚濁の原因となってしまう場所はあるのです。
公害防止管理者を目指す方だけでなく、職場が水質汚濁の原因となる可能性があるという方もぜひこの記事を読んでみてください。

  1. 水質汚濁とは?
  2. 水質汚濁の種類とは?
  3. 水質汚濁防止法と特定施設とは?
  4. 水質汚濁を防止する方法
  5. おわりに

1.水質汚濁とは?

水質汚濁とは、河川や湖沼(こしょう)湾岸、沿岸海域など公共の水域が人為的な活動が原因で汚れてしまうことです。
工業用水による汚染をイメージする方も多いですが、土砂など自然界にある物質が流れ込んだとしても水質汚濁になります。
水は、一度汚れると浄化に時間がかかるもの。
また、水質汚濁の種類によっては、病気の原因になるものもあります。
かつて日本で発生した公害病のうち、「水俣病」や「イタイイタイ病」は水質汚濁が原因でした。
また、水質汚濁は一般の家庭が発生源になる可能性もあります。
20年ほど前まで、都市部の河川は家庭から出る生活排水が原因で水質汚濁が激しいところも珍しくありませんでした。
今は、法律が整備され、汚水を直接海や川に流さないようなシステムも作られています。
しかし、何らかのきっかけで水質汚濁が発生する危険はゼロではありません。
そのため、公害防止管理者が定期的に水質の検査をする必要があります。
また、水質汚濁防止法で「特定施設」に定められた場所は、使用した水を河川に放出するのにも厳しい制限が設けられているのです。

2.水質汚濁の種類とは?

この項では、水質汚濁の原因となる物質についてご紹介します。
皆様が思っている以上に水を汚染する物質は多いのです。

2-1.重金属

カドミウムや鉛など、公害病の原因にもなった物質です。
重金属による水質汚濁が起これば、水だけでなくそこに住む動植物も汚染されてしまいます。
また、重金属に汚染された水が体内に入れば、中毒症状が出るでしょう。
さらに、重金属は生物濃縮も起こります。
生物濃縮とは、食物連鎖が起きるたびに生物の体内で汚染物質が濃縮されていく現象です。
水に溶けこんだ重金属の量がわずかであっても、生物濃縮が起きれば食物連鎖の頂点に立つ人に重大な悪影響が出る可能性も高いでしょう。

2-2.化学物質

重金属と同じくらい、深刻な水質汚濁を引き起こす物質です。
重金属よりも使われている場所が多いので、汚濁が発生する危険はより高いでしょう。
また、少量では無害でも大量に集まると有害になる化学物質も少なくありません。
ですから、水質汚濁が始まって年月がたってから、影響が出始めることもあります。

2-3.農薬

農薬による水質汚濁は昭和30年ごろから問題になり始めました。
現在の農薬は、人体に悪影響があるほど強力なものは使われていません。
しかし、水の中に住む生物やそれらをエサにしている鳥類などが減少する、という弊害をもたらしています。

2-4.有機物

家庭用の排水や、畜産動物の糞尿(ふんにょう)などが該当します。
人体に直接悪影響があるわけではありませんが、水の濁りや悪臭、水質の低下などが起こるのです。
また、海水に有機物がたくさん流れ込むと富栄養化が進んで、赤潮が発生することもあります。
さらに、湖や池、沼に有機物がたくさん流れ込むと、アオコが発生して生物に被害が出ることもあるでしょう。

2-5.その他

油や絵の具など、水の濁りや悪臭が発生する物質や、泥なども水質汚濁の原因になります。
特に、泥土は一度流れ込むと水質汚濁だけでなく水底の地形を変えて水害が起こりやすくなることもあるでしょう。
大規模な土木工事が行われている場所は、台風や長雨などで土砂が水中に流れ込みやすくなっています。
そのため、必ず対策を立てなければなりません。

3.水質汚濁防止法と特定施設とは?

水質汚濁防止法とは、1970年に制定された水質の保全や工場排水の規制に関する法律です。
この法律が制定される前までは、水質汚濁を予防する法律がありませんでした。
その結果、水質汚濁が原因の公害病が発生したのです。
また、特定施設は水質汚濁防止法の中で定められている、水質を汚濁させる物質を出す可能性が高い施設を指します。
特定施設に指定された場合は、施設内で使った水を下水に流す際に、法律に沿った設備を通して排水しなければなりません。
また、定期的に施設内や施設で使った水を放出した水源の水質を調査し、報告する義務もあります。
特定施設は重金属や化学物質を使う工場のほかに、食品工場や印刷工場、さらに畜産業なども含まれているのです。
しかし、水質汚濁防止法はすべての水質汚染を防いだり、水質汚濁の原因となる物質を水中に放出したりした企業などを罰することはできません。
たとえば、特定施設に指定されていない施設がいくら汚染物質を垂れ流しても、対処することはできないのです。
そのため、水質汚濁防止法は自治体の条例などと組み合わせて初めて、機能する法律といえます。

4.水質汚濁を防止する方法

では最後に、水質汚濁を防止する方法をご紹介します。
水質が一度汚濁してしまったら、浄化に時間と費用がかかるのです。
そのため、汚染物質を水中に放出しないことが大切になります。

4-1.汚染物質を水に流さない

最も基本的な方法です。水に流すという処理方法は最も手軽でお金もかかりません。
ですから、発展途上国ではいまだに工場から汚水の垂れ流しが続いています。
汚染物質を一度貯水槽にためて沈殿させてから取り除く方法や、流水として流しながら汚染物質だけを取り除いていく方法などがありますので、適した方法を選びましょう。

4-2.汚染物質を使わない

水質を汚染する物質を使わないことも、水質汚濁を防ぐ有効な方法です。
技術の進歩により、かつては有害な物質を使わなければできなかった製品が、今は無害なもので代用できるようになりました。
ですから、代替えが効くものは代替えしましょう。

4-3.定期的な水質の検査をする

公害防止管理者の有資格者などが、定期的な水質の検査をすれば水質汚濁をごく小さいうちに発見できるでしょう。
いくら汚染物質を取り除く装置をつけても、万が一ということがあります。
水質汚濁防止法でも特定施設は検査が義務づけられているのです。

5.おわりに

いかがでしたか?今回は、水質汚濁防止法や特定施設などについてご紹介しました。
前述したように、水質は一度汚染されると浄化に時間と費用がかかります。
また、水質が汚染されれば、土壌、農作物、海産物もいっぺんに汚染されてしまうでしょう。
ですから、水質汚濁は可能な限り防がなくてはなりません。
幸い、現代では技術が進化し、水質汚染物質を水中に放出しない設備がたくさん開発されています。
特定施設はそれを設置するのと同時に、公害防止管理者の有資格者などが定期的に水質検査を実施しましょう。
そうすれば、万が一特定施設の近くで水質汚濁が発生した場合も、「原因は別の場所である」と素早く証明することが可能です。
そのための費用や時間は惜しまないようにしましょう。
また、公害防止管理者は汚染物質に関する教育などを従業員に施しても効果的です。

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