
特殊建築物とは?特殊建築物の定期調査・報告、資格取得について
2016/07/10
2021/04/07
建築物の中には「特殊建築物」といわれているものがあります。特殊建築物とは一体どんなものなのか、疑問に思っている人は多いでしょう。そこで、特殊建築物の概要や規定、特殊建築物定期調査、特殊建築物に関する資格・講習など詳しく説明していきます。建築業界で働いている人、特殊建築物について知りたい人はぜひ参考にしてください。
この記事を読むことで、特殊建築物の基礎知識を身につけることができます。
1.特殊建築物とは
マンションや一般住宅、工場、倉庫、飲食店などさまざまな建築物があります。さまざまな建築物がある中、特殊建築物とはどんな建物なのでしょうか。
1-1.特殊建築物の概要、どんな建築物か
特殊建築物は建築基準法第2条2項で定められている建築物のことです。当てはまる建物をいくつかあげてみると、学校、体育館、劇場、展示場、百貨店、ダンスホール、旅館、下宿、工場、危険物、火葬場などが特殊建築物になります。戸建て住宅や事務所などは当てはまりません。
1-2.特殊建築物の規定、義務
特殊建築物定義は構造・設備自体が特殊な建築物であることです。不特定多数の人が利用する、火災発生の可能性が高い、非常時は人命に被害がおよびやすい、周囲に与える影響が大きいなどさまざまな特徴を持っています。だからこそ、立地条件を厳しく制限しなければなりません。立地条件だけでなく、構造や防火非難規定、工事中の取り扱いなども大切な義務です。
2.特殊建築物定期調査について
普通の建物とは違うつくりになっている特殊建築物は定期的な調査報告が必要不可欠です。特殊建築物定期報告や基準、内容について詳しく説明します。
2-1.特殊建築物の調査基準
特殊建築物の調査基準は内容に沿って事細かく決まっています。たとえば、建物の安定に関係している地盤の状況についてです。地盤の状況に関しては目視で確認することになります。目視で確認する場合、建物周辺に陥没がある、安全性をいちじるしく損ねていると判断すればすぐに見直さなければなりません。ヒビ割れが見られる場合も塗り替えが必要です。以上あげた調査基準はほんの一部になります。詳しい基準は以下のURLで確認できるのでチェックしてください。
特殊建築物等の調査方法・判定基準(日本建築防災協会)
建築基準法
2-2.特殊建築物の調査内容
建築基準法の調査内容は以下のとおりです。
- 地盤・地形・擁壁(ようへき)・避難通路など敷地の状況
- 基礎・土台・柱・壁・広告塔・看板など構造体や落下危険物の状況
- 外壁の防火構造、防火戸、防火区画、通路、階段、出入り口などの避難経路、施設などの状況
- 採光(さいこう)、換気設備の設置などの状況
以上の4項目が主な定期調査の内容になります。定期的にしっかり確認をすることで、建物内にいる人たちの安全が確保できるのです。ちなみに、特殊建築物定期調査は平成28年6月から改正・施行されます。最新情報は国土交通省のホームページを確認してください。
2-3.報告書
特殊建築物の定期調査をした後は必ず報告書にします。特殊建築物定期調査報告をおこなった建築物には定期調査報告をしたというマークが表示されるでしょう。定期調査や検査によってマークは異なります。特定建築物等定期調査、防火設備定期調査、建築設備定期調査、昇降機等定期調査とさまざまです。報告書の提出先は各都道府県になります。
3.特殊建築物にかかわる資格について
特殊建築物の定期調査・報告をおこなう人は有資格者でないといけません。建築防災について十分な知識を取得し、建築物の安定性を総合的に評価することが大切です。では、特殊建築物にかかわる資格についてチェックしていきましょう。
3-1.特殊建築物等調査資格者について
建築基準法によって定められている有資格者は「特殊建築物等調査有資格者」です。特殊建築物等調査有資格者は1級・2級建築士、または国土交通大臣の登録した講習を修了した者とみなされています。特殊建築物等調査資格者として認められた者は、国から特殊建築物等調査資格者証をもらうことができるのです。
3-1-1.仕事内容
特殊建築物等調査資格者の主な仕事内容は、特殊建築物の定期調査・報告です。敷地の構造や建物の内装・外装の状態、上下水道、空調、電気なども点検・検査内容に入っています。もし、異常な点が見つかったらすぐ対処するために動くのです。また、特殊建築物の管理者への指導もおこないます。
3-1-2.必要性
特殊建築物の専門家、プロフェッショナルなのでさまざまな場所で重宝されるでしょう。商業施設なども特殊建築物の1つです。人が多く出入りする場所はほとんど特殊建築物等調査資格者が点検・調査をおこなっています。特殊建築物に関して専門的な知識を持っているのは有資格者の強みです。
3-1-3.メリット
特殊建築物等調査資格者の就職先は建築設備会社などです。設備会社が人材を雇う際、資格を持っていない人よりも有資格者のほうを優先します。特殊建築物等調査資格者は建築全般に関する知識を持っている証拠です。よって、就職で役立ちますし、資格手当がつく可能性もあります。さまざまなところで有資格者というメリットが生まれるのです。
3-2.資格取得について
公的資格である特殊建築物等調査資格者は講習と修了考査によって取得できます。難しいと思う人は多いでしょう。けれども、難易度はやさしいほうです。また、人気度が低いところがあります。しかし、将来性、就職・転職には最大限の力を発揮する資格です。ただし、資格取得には受講資格をクリアしなければなりません。
3-2-1.方法
受講料を支払って講習を受け、修了試験をパスすれば資格が取得できます。一般財団法人日本建築防災協会が講習をおこなっているのでぜひ申し込みをしてみてください。
3-2-2.実務経験
受験資格の中には実務経験が何年以上という記載があります。卒業した学校や条件によって実務経験の年数が異なるでしょう。また、後ほど講習者資格の項目で詳しく説明します。
3-3.建築設備調査資格者
建築設備の全般的な検査をおこなうのが建築設備調査資格者です。建築設備調査資格者は建築基準法第12条第3項の規定にもとづいています。換気設備や排煙設備、給水設備、排水設備、非常用の照明器具など建築設備のプロフェッショナルですね。建築設備調査資格者になるには、登録建築設備検査員講習を受講して修了試験にパスしなければなりません。
4.特殊建築物調査資格者の講習について
特殊建築物調査資格者を取得したい場合、講習を受けて修了試験にパスする必要があります。そこで、講習者資格や講習概要、スケジュールなど詳しく説明しましょう。
4-1.講習者資格
講習者資格は全部で10項目あります。
- 指定学科で大学を卒業し、実務経験が2年以上の者
- 指定学科で3年制短大を卒業し、実務経験が3年以上の者
- 指定学科で2年制短大を卒業し、実務経験が4年以上の者
- 指定学科で高校を卒業し、実務経験が7年以上の者
- 建築に関しての実務経験が11年以上の者
- 特定行政庁職員として建築行政に関して2年以上の実務経験者
- 消防史員として5年以上の火災予防業務の実務経験を有する者
- 甲種消防設備士として実務経験が5年以上の者
- 防火対象物点検資格者として実務経験が5年以上の者
- 上記と同等以上の知識および実務経験を有する者
以上のいずれかに当てはまる人は講習を受けることができます。
4-2.講習概要
特殊建築物調査資格者の試験申し込みや講習日、場所、受講料、講習内容やスケジュール、問い合わせ先について説明します。受講しようと思っている人は、ぜひチェックしてくださいね。
4-2-1.申し込み
申し込みは毎年6月下旬からスタートします。開催3週間前まで申し込みを受けつけているので、まだ間に合うでしょう。今年の開催日は10月下旬~10月下旬ごろまでです。ちなみに、東京では秋と冬の年に2回おこなっています。
一般財団法人日本建築防災協会
4-2-2.講習日
受講日程は開催場所によって異なります。東京は年に2回、10月上旬と12月上旬ごろに開催予定です。名古屋と福岡は10月下旬ごろ、大阪は11月中旬ごろになります。
4-2-3.場所
特殊建築物等資格者の受講場所は東京・名古屋・大阪・福岡の4か所です。申し込みをするときは受講場所を間違えないように気をつけてくださいね。もし、受講会場を変更したい場合は申し込み締め切り日までに申請しましょう。定員に余裕があれば認められます。
4-2-4.受講料
受講料は税込みで50,760円です。受講で使用するテキストも含まれているので安心してください。
4-3.講習内容、スケジュール
講習は4日間でおこなわれます。4日間とも9:30ごろ~17:00ごろまで講習を受けることになるでしょう。1日目は注意事項説明と特殊建築物等定期調査制度総論、建築学概論を学びます。2日目は建築基準法令の構成と概要、特殊建築物等の維持保全、建築構造、3日目はその他の事故防止と防火・非難です。そして、最終日の4日目は注意事項説明、特殊建築物等調査業務基準、修了考査になります。
4-4.問い合わせ先
特殊建築物等資格者の試験に関して疑問がある人は、一般財団法人日本建築防災協会に問い合わせてください。ホームページ、または電話での問い合わせが可能です。
5.特殊建築物調査資格者のテキストについて
特殊建築物等資格者の試験勉強におすすめしたいテキストをいくつか紹介します。自分に合ったテキストを選び、勉強を続けていきましょう。
5-1.マンガでわかる建築基準法入門
文字ばかりだとごちゃごちゃしていてわからない…と悩んでいる人におすすめしたいのが「マンガでわかる建築基準法入門」です。建築基準の基礎を学ぶことができますよ。また、マンガ形式になっているため非常にわかりやすいです。
5-2.史上最強図解 よくわかる建築基準法
建築基準法をよりわかりやすく、読みやすくしたテキストが「史上最強図解 よくわかる建築基準法」です。建築物の基礎がわかっていない人でも簡単に理解できます。わからないところがあれば、図解で確認するといいでしょう。
6.特殊建築物に関してよくある質問
特殊建築物に関してよくある質問を5つあげていきます。疑問に思っていることは試験を受ける前に必ず解消しておきましょう。
6-1.特殊建築物等定期調査業務基準とは?
特殊建築物等定期調査業務基準とは、建築物の定期調査報告に関する調査項目が載っています。さらに、調査の方法や判定基準など大切な内容も記載しているのです。安全な特殊建築物を維持し続けるためには業務基準が大切になります。
6-2.特殊建築物の用途変更とは?
特殊建築物の中には用途を変更した場合、申請が必要なケースがあります。たとえば、「建築基準法第6条1項1号の特殊建築物」です。たとえば、ボーリング場、共同住宅、ナイトクラブなどがあります。ただし、事務所や工場の用途変更の場合は申請する必要はありません。基本、100㎡以上の場合は用途変更の確認が必要になります。
6-3.特殊建築物に内装制限はあるのか?
内装制限がかかっている特殊建築物があります。内装制限がかかる特殊建築物は木材でできている建築物です。ただし、特殊建築物の内装制限といっても天井や壁の内装だけの制限になります。
6-4.特殊建築物と特定建築物の違い
特殊建築物と特定建築物はまったく違う建築物です。特定建築物は特定用途に利用している面積が3,000㎡以上の建築物になります。一方、特殊建築物は建築基準法にもとづいた特殊な建築物です。特殊建築物と特定建築物には違いがあることをきちんと把握しておきましょう。
6-5.実務経験とは?
受験資格には実務経験の年数が決められています。実務経験とは、建築に関する実務のことです。たとえば、建築設計や施工、建築物の保守・管理、建築大工などがあります。
まとめ
特殊建築物定期調査・報告は特殊建築物の安全性を維持するために大切なことです。そして、特殊建築物の定期調査・報告ができるのは特殊建築物等資格者だけになります。有資格者こそ、特殊建築物のプロフェッショナルです。近年、ニュースでも流れた歌舞伎町の火災など、建築基準法が見直されてきています。これから、さらに建築法や特殊建築物等資格者の立場が重要視されるでしょう。
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