危険予知活動(KY活動)の基礎知識~方法・効果について~

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職場や作業現場には危険がひそんでいます。いつも働いている場所であっても、そのときの状況や機械の調子によって思わぬ事故も起きるものです。職場・作業現場にひそんでいる危険を把握し、未然に防ぐための活動が危険予知活動(KY活動)になります。危険予知活動を正しくおこなうためには、その基礎知識をきちんと把握しておかなければなりません。

そこで、本記事では、危険予知活動の基礎知識や方法・効果について詳しく説明します。

  1. 危険予知活動の基礎知識
  2. 危険予知活動の方法
  3. 危険予知活動の効果について
  4. 危険予知活動に関してよくある質問

この記事を読むことで、危険予知活動を正しくおこなうために必要な情報と知識を得ることができます。気になっている方はぜひチェックしてください。


1.危険予知活動の基礎知識

従業員の安全・安心を確保するためには、その場で働く人すべてが正しい知識と的確な行動を身につけておかなければなりません。安全衛生の確保に関する危険予知活動とは一体どのような内容なのでしょうか。詳しく説明しましょう。

1-1.危険予知活動とは?

危険予知活動はKY活動・KYKともいい、職場や作業現場で起こりうる災害を未然に防止するための活動です。まず、作業開始前に起こりうる災害を想定します。どうすれば災害を未然に防ぐのか、ベストな対策を立てるための想像をふくらませるのです。実務経験がある人ほど、豊富な経験で想像力を働かせることができるでしょう。そして、災害が起きないための防止対策を立てていきます。この一連の流れが危険予知活動なのです。

1-1-1.概要

職場や作業現場で起こる災害は、ほとんどがヒューマンエラーがもととなっています。たとえば、確認ミスや職場仲間とのコミュニケーション不足などです。ヒューマンエラーをなくすためには、機械設備などに対する対策はもちろん、安全衛生についての知識・技能教育を管理していかなければなりません。危険予知活動は危険に対する感受性を鋭くさせ、集中力を高める活動も含まれています。現場で働いている人全員が危険因子を把握し共有することで、ヒューマンエラーが防止できるのです。

1-1-2.歴史

安全衛生の基本である危険予知活動の始まりは1973年といわれています。1973年、中央労働災害防止協会の欧米安全衛生視察団に参加していた住友金属工業の和歌山製鉄所労務部著が、ベルギーのソルベイ社を訪れました。その際に交通安全教育用のシートに目がとまったのです。危険を危険と認識し、各自が安全行動に努めることで事故防止につながることが有効だと考えた結果、住友金属工業内でプロジェクトチームが結成されました。結成後、危険予知活動や後ほど説明する危険予知訓練が体系化され、現在も引き継がれています。

1-2.危険予知活動の対象

危険予知活動の対象は危険がひそんでいる場所です。主に、建築・工事現場や工場などが当てはまりますが、危険は多くの職場にひそんでいます。大切なのは、働いている場所で起きる災害とは何なのか考えることです。「危険ではない」と思っていても人為的なミスで災害が起こる可能性もあります。危険対象ではないからと決めつけるのではなく、従業員で考え、話し合いましょう。

1-3.危険予知活動の目的

危険予知活動の主な目的は危険に対する労働者の意識を高め、起こりうる災害を未然に防ぐことです。あらかじめ、起こる災害を想定しておけば適切な対策を立て、危険箇所を減らすことができます。また、労働者同士で危険について話し合いをおこない、実際に防止につながる活動をすることでチームワークが生まれるのです。より良い職場環境をつくる役割も担っています。

1-4.危険予知訓練との違い

多くの企業や建設現場が危険予知活動と同時に危険予知訓練(KYT)をおこなっています。危険予知訓練とは、作業に関する危険箇所や危険行動の原因を視覚的に見つけて対策を立てることです。そして、危険予知活動がスムーズにできるように事前に訓練します。つまり、危険予知活動の前におこなう取り組みですね。また、危険予知訓練は実際に起きた事故事例を踏まえながら訓練をおこないます。

職場や作業現場で起こりうる災害を未然に防止するための活動が危険予知活動なんですね。
職場や作業現場で起こる災害は、ほとんどがヒューマンエラーがもととなっているため、現場で働いている人全員が危険因子を把握し共有することが、ヒューマンエラーの防止につながるのです。

2.危険予知活動の方法

実際に危険予知活動はどのようにおこなうのでしょうか。基本的な4ラウンド法や活動表・報告書、実例について詳しく説明します。

2-1.4ラウンド法とは?

4ラウンド(4R)法は現場や作業にひそんでいる危険を発見・把握・解決するための基本手法です。危険予知活動をするための意欲を高める目的を持っています。現状把握・本質研究・対策樹立・目標設定と4つの段階(ラウンド)を踏まえながら、順にすすんでいく方法です。それぞれの内容について具体的に見ていきましょう。

2-1-1.現状把握

最初の段階である第1Rの現状把握では、現場や職場にどんな危険がひそんでいるのか、従業員全員で話し合いをします。考えられる危険を全員で出し合い、話し合うことで危険に対する意識の共有ができるのです。よって、1人ではわからなかった危険因子も把握できます。

2-1-2.本質研究

第2Rとなる本質研究では、話し合いで出てきた危険要素の中から重要なものをしぼり出します。たとえば、用紙に危険要素を複数ピックアップし、その中から重要だと思われるポイントに◎をつけてアンダーラインを引くのです。従業員全員が重要ポイントをしっかり押さえることが大切だといえるでしょう。

2-1-3.対策樹立

第3Rとなる対策樹立では、危険ポイントをどのように解決するのか話し合います。ベストな対策案を立てるために全員で案を出し合うことが大切です。複数の対策案の中から最も適切な案を見つけ出すことができます。また、「こういう考え方もあるんだ」と、それぞれが改めて実感できるのです。

2-1-4.目標設定

第4Rとなる目標設定では、出し合った対策案の中から重点実施項目を決めます。そして、重点実施項目をチームの行動目標にして具体化する段階です。「私たちはこうして危険予知活動をおこなう」という具体的な目標を掲げることができます。最終的に、従業員全員で目標を復唱し、確認しなければなりません。

2-2.活動表・報告書

従業員全員が危険予知活動を正しくおこなうためには活動表・報告書が必要不可欠です。活動表には、グループの作業内容・本日の安全目標・会社名・リーダー名・作業員数などを記載します。口だけでの確認は不十分なので紙に記すことが大切なのです。活動表を全員が確認できる場所に貼りつけておけば、常に確認できます。また、4R法で話し合った内容を記録する報告書も大切です。活動表や報告書はインターネットで無料ダウンロードができるので、ぜひチェックしてみてください。

株式会社石井マークのダウンロードページ

2-3.実例について

危険予知活動は起こりうる災害に対する策を立てることが主な目的です。そのため、まずは、どのような災害が起きるのか想定しなければなりません。厚生労働省の職場あんぜんサイトでは、幅広い分野の職場で起きる災害が多数掲載されています。作業の種類・原因・対策なども詳しく記載しているのでぜひチェックしてみてください。自分たちの現場に起きやすい災害を選び、従業員同士で話し合ってみましょう。

4ラウンド法という方法があるんですね。
危険予知活動をするための意欲を高めるのが目的で、現状把握・本質研究・対策樹立・目標設定と4つの段階を踏まえて、順にすすんでいく方法となっています。

3.危険予知活動の効果について

実際に危険予知活動をおこなっている企業・現場とそうでないところでは、災害の発生率に大きな違いが出ています。そこで、効果を発揮するためにも、重要性・効果・注意点について詳しく見ていきましょう。

3-1.重要性

危険予知活動は作業に入る前におこなうものです。作業前に、その日の作業内容・現場の状況が把握できるため、ヒューマエラーの防止はもちろん、不安全行動・状態に対しての対策がわかりやすくなります。対策を立てるだけではどういう行動を取るべきかわかりませんよね。つまり、危険予知行動は立てた対策を実践するための活動なのです。従業員同士で正確な行動を確認し合うことができます。また、現場で起こる災害は従業員同士の意思疎通ができていないことも原因の1つです。危険に対する同じ意識を持ち、高めるためにも重要な活動といえます。

3-2.効果について

中央労働災害防止協会の資料によると、アジア関連会社での安全活動の活発化などにより災害件数合計が2006年の61件から2010年の18件と、4年間で70%減少したことが報告されています。また、2006年ではヒューマンエラーによる災害が管理上の問題の9割を占めていましたが、2010年ではおよそ6割と減少しました。資料を見てわかるように、危険予知機能の効果は出ているのです。

3-3.注意点

危険予知活動で大切なのは、日々の作業内容に沿った活動をおこなうことです。いつもとは違う内容の場合、その内容に見合った危険予知活動をおこなわなければなりません。また、毎日同じ作業であっても状況や天気によって異なります。たとえば、脚立で作業をおこなう場合、雨の日は足元が不安定になるでしょう。そのため、足元の整理整頓や安定を確保することが大切です。工具を使う場合は検査が完了しているかどうかも内容に含まれます。危険予知活動をおこなう場合は、作業内容に合っているか考えてくださいね。

安全活動の活発化によって災害件数合計が4年間で70%減少したデータもあるんですね。
危険予知活動で大切なのは、日々の作業内容に沿った活動をおこなうことですから、いつもとは違う内容の場合、それに見合った危険予知活動をおこなう必要があります。

4.危険予知活動に関してよくある質問

危険予知活動に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.タッチアンドコールとは?
A.指さし唱和の一種をタッチアンドコールといいます。従業員全員で手を重ね合わしたり、触れ合ったりしながらKYTのしめくくりとしておこなうものです。たとえば、全員が円になり、手を重ねながら最終的に掲げた目標を全員で唱和します。タッチアンドコールは団結力と危険に対する意識を高める効果が期待できる取り組みです。

Q.ヒヤリハット活動とは?
A.ヒヤリハット活動は、ヒヤッとしたこと、ハッとしたことを取り上げ、災害防止に結び付けることが目的の活動です。仕事にかかわる危険有害要因を把握するためにはヒヤリハット活動が必要不可欠といえます。危険有害要因を朝礼や報告書などで社内に情報提供することも活動の1つです。

Q.危険予知活動の効果を高めるポイントは?
A.高めるポイントは全部で3つあります。些細(ささい)なヒヤリハット経験も活用すること・災害事例を職場に取り入れること・電動工具や機械の機能を理解したうえで取り扱いミスの危険性を知ることの3つです。それぞれのポイントを従業員の1人1人が把握することで災害防止につながります。

Q.イラストシートの役割は?
A.イラストシートは危険予知活動の前に実践する危険予知訓練で使います。イラストシートは危険因子が含まれている場面が状況内容とともに記載されているイラスト用紙です。現場の設備や危険因子が目で確認でき、従業員全員での話し合いが可能になります。現場に見合ったイラストシートをどんどん使用して危険予知訓練をおこなってください。東京労働局長登録養成機関の「(財)中小建設業特別教育協会」では、無料でイラストシートが配布されています。

これで危険予知活動について知りたかったことがよくわかりました。
安全衛生に必要不可欠な活動ですから、しっかりと役立ててくださいね。

まとめ

危険予知活動(KYK・KY活動)は企業や現場の安全衛生に必要不可欠な活動です。現場で考えられる危険因子を従業員全員で確認しながら対策を立てて実践します。危険予知活動は作業をおこなう前にする行動なので、正しい取り扱いや危険な操作が事前に確認できるのです。また、危険予知活動前におこなう危険予知訓練(KYT)も大切な行動になります。従業員全員が危険に対する意識を高め、ヒューマンエラーを防ぐためにも危険予知活動をスムーズに続けていきましょう。事前に基礎知識やポイントを押さえておけば、正しい危険予知活動ができます。大切なのは従業員全員がすすんで取り組むことです。全員で協力し合いながら活動してくださいね。

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