シックハウス症候群の原因!「ホルムアルデヒド」の測定や規制とは?

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有機化合物の1つである「ホルムアルデヒド」は人体に悪影響をおよぼす毒物です。ホルムアルデヒドとは何なのか、知識を身につけておかなければ生活に支障が出てきます。安全な生活を送るためにも、ホルムアルデヒドの影響がない環境を維持しなければなりません。そこで、ホルムアルデヒドの基礎知識や測定方法・対策・関連する資格など詳しく説明します。

  1. ホルムアルデヒドとは
  2. ホルムアルデヒドが人体に与える影響
  3. ホルムアルデヒドの測定について
  4. ホルムアルデヒドの測定方法
  5. ホルムアルデヒド対策
  6. ホルムアルデヒド測定と資格について
  7. 建築物環境衛生管理技術者の試験について
  8. ホルムアルデヒドに関してよくある質問

この記事を読めば、ホルムアルデヒドの対策に必要な情報を知ることができ、関連資格の試験対策ができます。


1.ホルムアルデヒドとは

ホルムアルデヒドの対策をするためにはホルムアルデヒドの知識を身につけることが大切です。ホルムアルデヒドの定義や歴史・使用される場所について説明しましょう。

1-1.ホルムアルデヒドの定義

ホルムアルデヒドは揮発性有機化合物(VOC)の1つです。揮発性有機化合物はホルムアルデヒドのほかに、ホルマリンなど100種類以上が存在しています。揮発性有機化合物のほとんどが神経系に悪影響を与える物質です。特に、ホルムアルデヒドは一定量を超えると人体にとって有毒になります。ホルムアルデヒドの性質は常温で無色透明、水によく溶ける点が特徴的です。

1-2.ホルムアルデヒドの歴史

ホルムアルデヒドは昔から尿素樹脂やフェノール樹脂・繊維板・合板などの生産に使用されていました。以上のものを生産するときの接着剤として用いられる重要な原料です。私たちの身近なところでは、でんぷんのりや天然系接着・防腐剤・形態安定シャツにホルムアルデヒドが使用されています。

1-3.ホルムアルデヒドが使用されているところ、場所

また、ホルムアルデヒドは建物の建設・リフォーム時に使う材料に含まれている物質です。ホルムアルデヒドを発散させる建築材料は面積制限が定められています。家の中にある材料や家具類からもホルムアルデヒドが発散しているのです。

2.ホルムアルデヒドが人体に与える影響

ホルムアルデヒドが人体に与える影響とは、一体どんなものがあるのでしょうか。ホルムアルデヒドの毒性について知り影響をチェックしていきたいと思います。

2-1.ホルムアルデヒドの性質・毒性

ホルムアルデヒドは刺激臭を放つ毒性を持っています。濃度が濃いほど粘膜が強い悪影響を受けるのです。急性毒性に陥る可能性もあるため、十分に注意しなければなりません。また、国際がん研究機関では発がん性のある化学物質に指定されています。

2-2.化学物質過敏症

人体への影響として「化学物質過敏症」があげられます。化学物質過敏症は名前のとおり、化学物質に過敏に反応する症状のことです。化学物質に触れると皮膚が炎症を起こす、目が痛む、部屋にいると頭痛がする、咳(せき)が出る、めまいがするなどの症状が起こります。体だけでなく、イライラしやすくなるなど精神面への影響も出てくるでしょう。

2-3.シックハウス問題

近年、建築物におけるホルムアルデヒドの影響で問題視されているのが「シックハウス問題」です。シックハウスとは「病気の家」を言い表しています。建築物の影響によってあらゆる健康被害、アレルギーが発生する症状です。新築住宅やリフォーム後の住宅にいて気分が悪くなった場合、シックハウスの症状が考えられます。シックハウス症候群の症状はめまい・頭痛が代表的です。

2-4.その他

その他、2009年に国際がん研究機関が骨髄性白血病の原因物質として特定しました。2010年には米国環境保護庁が白血病・上咽喉がん・ホジキンリンパ腫の発症原因になると公表しています。ホルムアルデヒドは非常に危険な物質です。

3.ホルムアルデヒドの測定について

ホルムアルデヒドを除去するには、まず、ホルムアルデヒドの量を把握しなければなりません。それでは、ホルムアルデヒドの測定について説明していきましょう。

3-1.ホルムアルデヒドの規制について

ホルムアルデヒドの取り扱いは法律で規制されています。規制について記載されている法律の1つが「ホルムアルデヒド排出規制値」です。ホルムアルデヒドの排出値について都道府県条例から規制されています。また、厚生労働省はホルムアルデヒドの室内基準値を0.08ppmと決めているのです。

3-2.建築基準法の使用制限について

建築基準法ではホルムアルデヒドの使用が制限されています。ホルムアルデヒドの影響を防止するためにも使用制限はしっかり守らなければなりません。主に、「ホルムアルデヒドを発散する内装仕上げの面積制限」「常時換気できる設備の設置義務」「天井裏や床下、収納部材の内部の制限」があげられます。ちなみに、ホルムアルデヒドの発散速度は以下のとおりです。

  • 規制対象外建材…0.005mg/㎡h以下
  • 第三種ホルムアルデヒド発散建築材料…0.005mg/㎡h以上~0.02mg/㎡h以下
  • 第二種ホルムアルデヒド発散建築材料…0.02mg/㎡h以上~0.12mg/㎡h以下
  • 第一種ホルムアルデヒド発散建築材料…0.12mg/㎡h以上

3-3.測定の必要性

ホルムアルデヒドの測定は空気環境測定の1つとして法律で義務づけられています。測定をすることで具体的なホルムアルデヒドの量が確認でき、有効的な対策ができるのです。ホルムアルデヒドの測定はシックハウス症候群の対策にもなります。

3-4.建築物衛生法の改正とホルムアルデヒド測定について

2003年7月1日にシックハウス対策における法令が全面的に改正されました。建築物衛生法の第20条、建築物のホルムアルデヒドに関する基準の特例や技術的基準が施行されたのです。シックハウス対策の規制を受ける化学物質に追加され、規制がなされました。また、ホルムアルデヒド測定器の指定も含まれています。改正の内容は以下のページからチェックできるので確認してください。

建築物衛生法関連政省令改正の概要:http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/12/tp1218-2a.html

4.ホルムアルデヒドの測定方法

それでは、実際にホルムアルデヒドの測定をおこなってみましょう。専用の機器を使用すれば自分たちでもホルムアルデヒドの測定が可能です。これから、測定方法や測定基準など説明します。

4-1.測定方法

空気中のホルムアルデヒドの測定方法は3つあります。「固体捕集方法」「高速液体クロマトグラフによる分析」「検知管方式による測定機器」です。固体捕集方法や高速液体クロマトグラフによる分析は専門家がおこなう測定方法になります。一般人が測定する際は、検知管方式による測定機器が最も簡単です。

4-2.測定基準

ホルムアルデヒドに関する法律では、ホルムアルデヒドの測定基準値は0.08ppmと定められています。ビル管理法によると、測定時期は新築や大規模修繕・模様替えをおこなった後です。また、最初に迎える6月1日から9月30日までの期間中に1回となっています。測定場所は階ごとの居室、測定位置は通常の使用時間、居室中央部の床上から0.75m~1.20mです。

4-3.測定の義務主体と届け出、罰則などについて

ホルムアルデヒドの測定義務主体は、建築物の権利者になっています。権利者が会社や企業に委託している場合、管理会社が義務主体になるでしょう。ホルムアルデヒドの測定は義務づけられているため、測定結果を記録していかなければなりません。必ず届け出をしなければならないわけではありませんが、管理状況が変わった際は届出が必要です。また、国が記録の提示を求める際も届け出が必要になります。きちんと測定されていなければ、罰則または行政機関からの警告・指示が入ることになるので注意してください。最悪なケース、建築物の使用が停止される可能性もあります。

4-4.測定の費用

ホルムアルデヒドの測定は専門業者に依頼するこもできます。依頼する場合は費用がおよそ数万円かかるでしょう。測定範囲が広いほど時間と人員が必要になるため、金額も大きくなります。たとえば、公共建築物のホルムアルデヒドを測定する際は1か所につき1万円が必要です。

5.ホルムアルデヒド対策

ホルムアルデヒド対策は通常生活と建築物からアプローチができます。それぞれどんな対策になるのか詳しく見ていきましょう。

5-1.通常生活における対策

日ごろの生活でできるホルムアルデヒド対策はたくさんあります。たとえば、新鮮な空気を維持するために必要な「換気」です。換気をしなければ室内の空気環境が悪くなります。室内にたまっているホルムアルデヒドを除去するためにもこまめな換気を心がけてください。

5-2.建築物における対策

建築物における対策としては、化学物質を放出しない家具・壁紙・材料を使うことです。リフォームを考えている方はホルムアルデヒドを発散しない材料を選んでください。もし、家具からホルムアルデヒドが放出されているのなら、買い替えを検討しましょう。壁紙を張り替えるのも1つの対策です。

5-3.その他

近年、ホルムアルデヒドによる影響やシックハウス問題が注目されています。そのため、ホルムアルデヒド対策となるグッズが数多く登場しつつあるのです。たとえば、ビックバイオからホルムアルデヒドの臭い対策ができる「ニオイのち晴れ」が登場しています。ホルムアルデヒド臭に対応する消臭剤です。シックハウス対策シートやスプレーもあるので、ぜひチェックしてみてください。

6.ホルムアルデヒド測定と資格について

ホルムアルデヒド測定は有資格者だけしかできません。空気環境調整や義務主体、担当できる資格など詳しく説明します。

6-1.ホルムアルデヒド測定を含む空気環境調整について

ホルムアルデヒド測定を含む空気環境調整は建築物環境衛生管理基準で定められています。建築物環境衛生管理基準とは、特定建築物維持管理権限者が担う特定建築物の維持管理です。空気環境の調整では、空気調和設備と機械換気設備を設けている場合、それぞれの空気環境の基準が細かく記載されています。

建築物環境衛生管理基準:http://ur0.pw/y25s

6-2.空気環境調整の義務主体

空気環境調整の義務主体は特定建築物の権限者です。権限者がきちんと責任を持って、建築物環境衛生管理基準に基づいた空気環境調整を実施しなければなりません。

6-3.担当できる資格

空気環境調整の測定に必要な資格は「建築物環境衛生管理技術者」です。特定建築物は必ず選任しなければなりません。また、建築物の権限者は建築物環境衛生管理技術者のいる建築物空気環境測定業者や管理業者に委託することもできます。

6-4.建築物環境衛生管理技術者(ビル管理者)について

建築物環境衛生管理技術者は通称「ビル管理者」です。建築物の環境衛生の維持管理や監督をおこなう国家資格でもあります。ビル管理者の主な業務は維持管理業務の計画立案や実施、測定・検査の実施と評価、問題点の是正処置などです。

6-5.資格の必要性

資格取得者はビルマネジメント業やビルメンテナンスの責任者として働くことができます。建築物の環境維持に関する専門知識を持っているため、雇う企業や会社も安心できるのです。特に、ビルなど不特定多数の人が出入りする場所は計画的な環境維持管理をおこなう役職が必要になります。

6-6.就職先、メリット

ビル管理者の資格を取得していると建築物を所有する企業の管財部門や管理職、総務部門で働けます。ほとんどの企業・会社が有資格者を求めているのです。また、資格手当を出すなど優遇している求人が増えています。就職・転職には非常に役立つ資格です。

7.建築物環境衛生管理技術者の試験について

建築物環境衛生管理技術者の試験を受ける前に受験資格や試験の概要、合格率、難易度などチェックしておきましょう。

7-1.受験資格

建築物環境衛生管理技術者の受験資格は厚生労働省令で定められた建築物の用途において、2年以上の実務経験がある者となっています。省令で定められた建築物の用途は以下のとおりです。

  • 興行場・百貨店・集会場・図書館・博物館・美術館・遊技場
  • 店舗・事務所
  • 学校
  • 旅館・ホテル
  • その他の類する建築物

7-2.試験の概要

国家資格である建築物環境衛生管理技術者は日本建築衛生管理教育センターが実施しています。これから、試験日時、実施地域、試験内容をご紹介しましょう。

7-2-1.試験日時

試験日時は1年に1回、10月ごろに開催されます。すでに平成28年度の申し込みは終了しました。平成29年度の試験概要は平成29年4月ごろに掲載予定とのことなので、ぜひ忘れずにチェックしてくださいね。

7-2-2.実施地域

試験の実施地域は札幌市・仙台市・東京都・名古屋市・大阪市および福岡市の6か所です。自宅から近い場所を選ぶことになります。

7-2-3.試験内容

気になる試験内容は全部で7科目です。

  • 建築物衛生行政概論
  • 建築物の構造概論
  • 建築物の環境衛生
  • 空気環境の調整
  • 給水および排水の監理
  • 清掃
  • ねずみ・昆虫などの防除

7-3.合格率、難易度

近年の合格率を見てみると、合格率はおよそ20%前後~25%です。合格率は低いですが、国家資格の情報サイトでは難易度が「普通」になっています。難易度が普通でも合格率が低いのは広い出題範囲が原因です。出題範囲が広いぶん、計画的に勉強時間を積み重ねていかなければなりませんね。

7-4.免許の交付、講習について

免許の交付は氏名や本籍地の変更や紛失、破損したときに必要です。1度免許を取得すれば更新する必要はありません。また、受講資格がある者は103時間の講習を受講することによって資格が取得できます。ただし、受講資格は厳しいです。

<受講資格>

  • 大学または旧大学の理学・医学・歯学・薬学・保健学・衛生学・工学・農学または獣医学の過程を卒業
  • 防衛大学校の理工学の過程を卒業
  • 海上保安大学校を卒業
  • 短期大学または、高等専門学校または旧専門学校の理学・医学・歯学・薬学・保健学・衛生学・工学・農学または獣医学の過程を卒業
  • 高等学校または旧中等学校の工業に関する学科を卒業
  • 学校教育法第56条の規定により大学に入学することができる者、または旧中等学校を卒業

8.ホルムアルデヒドに関してよくある質問

最後に、ホルムアルデヒドに関してよくある質問を5つピックアップしてみました。ホルムアルデヒドについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

8-1.シックハウスの検査とは?

シックハウス原因物質測定方法はパッシブ法とアクティブ法があります。パッシブ法とは、揮発性有機化合物(VOC)捕獲する専用機器を使用した測定法です。一方、アクティブ法は吸引ポンプを使用して室内の一定量の空気を吸引し採集します。

8-2.シックハウス換気回数とは?

換気回数は1日に何回換気をするのかという意味ではありません。室内の空気が1時間で何回外部の空気と入れ替わるかを表しています。

8-3.シックハウス症候群の治療法が知りたい

シックハウス症候群の治療法は自分でできることから始めます。換気をする、空気洗浄機を設置する、化学物質製品を減らす、規則正しい生活を心がけるなど改善をしてください。一向に症状が治らない場合は、シックハウス症候群や化学物質過敏症を扱う専門病院を受診しましょう。

8-4.デシケーターとは?

デシケーターとは湿気を嫌う対象物を乾燥状態のまま保管する容器です。ホルムアルデヒド放射量試験の化学分析方法としてデシケーターが使用されます。

まとめ

ホルムアルデヒドは人体に多大な影響をもたらす化学物質です。ホルムアルデヒドの影響を防ぐためには、基礎知識はもちろん、測定方法や対策を把握しなければなりません。ホルムアルデヒドの測定は特定建築物に限り、資格を持った人による測定が義務づけられています。資格者の監視・指導のもとであれば無資格者でも測定できるでしょう。ただ、ビルメンテナンス業などで働きたい方は、資格を取得したほうが有利です。ぜひ試験対策に必要な知識を身につけて、勉強を初めてくださいね。

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