【解説】防火対象物と特定防火対象物の違いとは?どんな場所が指定されるの?

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いつ、どこででも起きる可能性のある災害、それが火災です。
現在は、多くの方が長時間利用する建物も増え、一度火災が起こると大きな被害が出やすいところも少なくありません。
そこで、今回は防火対象物や特定防火対象物についてご紹介しましょう。
これらは、消防法で定められた「火災が起きると大きな被害が出ると想定されるので、防火設備をしっかりと準備しておくように」という施設のこと。
いったいどのような場所が指定されるのでしょうか?
答えは、この記事を読めば分かりますよ。

  1. 防火対象物とは?
  2. 防火対象物の種別とは?
  3. 防火対象物に指定された建物の管理とは?
  4. 防火対象物の点検作業とは?
  5. おわりに

1.防火対象物とは?

防火対象物とは、前述したように消防法で定められた「防火設備をしっかりと設置しておかないと、火災が起きたときに被害者が出る可能性がある」という場所です。
その定義を法律から抜粋すると「防火対象物とは、山林または舟車、船きょもしくはふ頭に繋留(けいりゅう)された船舶、建築物その他の工作物もしくはこれらに属するものをいう」となります。
つまり、人が生活したり長期滞在したりする可能性があるところすべてです。
もちろん、このような場所全部に防火対策ができれば、それに越したことはありません。
しかし、実現はとても難しいでしょう。
ですから、防火対象物にも種別を設けて防災設備を必ず設置しなければならない場所と、それ以外を区別しているのです。
では、種別はどのようになされるのでしょうか?
それを次の項目でご紹介します。

2.防火対象物の種別とは?

この項では、防火対象物の種別についてご紹介します。
どのような区分がなされているのでしょうか?

2-1.区分の基準とは?

防火対象物は、火災が発生したときに大きな被害が出るかどうかで区分が決まります。
一般的に多数の方が利用する施設ほど、防火対策をしっかりしなければならない場所として定められるでしょう。
ただし、大人数が働いている職場と不特定多数が利用する商業施設では、利用者が同じくらいであっても商業施設の方が防火設備をより厳重にしなければならない対象物になります。
これは、火災が発生した際避難に時間がかかると想定されるためです。

2-2.特定防火対象物とは?

特定防火対象物とは、防火対象物の中で最も消防用設備や防火設備の設置基準が厳しいところです。
消防法第17条2-5に定められている「多数の者が出入りするものとして政令で定めるもの」が特定防火対象物に指定されます。
一例をあげると、百貨店、ホテル、病院、福祉施設、学校施設などです。
建築計画を出したときから消防用設備の設置基準が厳しくなり、防火管理者の選任の条件も同じように限定されてくるでしょう。

2-3.複合用途防火対象物とは?

複合用途防火対象物とは、ふたつの異なる用途でひとつの建物を使っているところに認定されます。
一例をあげると、店舗兼住宅です。
また、オフィスビルでも売店や食堂が入っているところは複合用途防火対象物に指定されます。
しかし、防火対象物の管理権限、利用者、利用時間がすべて同一であれば単一用途の防火対象物に指定されることもあるでしょう。
たとえば、オフィスビルの一部に誰でも利用できる飲食店が入っている場合は複合用途防火対象物になります。
しかし、そこのビルで働いている社員しか利用できない社員食堂の場合は、単一用途の防火対象物に指定されることもあるでしょう。

2-4.防炎防火対象物とは?

これは、万が一火災が発生した際、延焼や火災拡大の可能性が大きい場所のこと。これに指定されると、防炎規制が義務づけられます。
防炎規制の一例をあげると、カーテンや布製ブラインド、どん帳、じゅうたんなどいわゆる「火がついたら燃え広がりやすいもの」に防炎製品を利用しなければなりません。
また、工事中の場合も工事用のシートが対象になります。
このような防炎製品は防炎ラベルのはりつけが義務化されており、どんなに優れた防炎効果があろうと、ラベルがはられていなければ防炎製品とは認められません。
ですから、建物に合わせて外国製の防炎製品を使おうと考えている場合は、注意が必要です。

3.防火対象物に指定された建物の管理とは?

さて、特定防火対象物や複合用途防火対象物に指定された場合は、法律に定められたように防火設備や消火設備を備えなければなりません。
ただし、備えただけでは不十分です。
日本は消防法や建築基準法が定められていますので、それを満たしていない建物はそもそも建築許可が下りません。
ですから、対象物に指定されているような施設が建築されるときは、それなりの防火設備や消火設備が備えられているはずです。
しかし、これらの設備は当然ですが、火災が発生しなければ使われることはありません。
それが一番よいのですが、だからといってずっとほったらかしにしておいた結果、火災が発生した際に消防設備が役に立たず犠牲者が出てしまったら最悪です。
実際、日本でこれまでに起こったビル火災で犠牲者が出たケースは、ほとんどが防火設備や消防設備が不備だったことが原因。
中には、非常階段や非常扉の前にものが置かれていたせいで、中にいた人が避難できなかったという例もあります。
ですから、防火設備や消防設備はただ単に設置すればよいというわけでなく、必ず定期点検が必要です。

4.防火対象物の点検作業とは?

特定防火対象物や複合用途防火対象物に備えられている防火設備や消防設備は、防火対象設備点検資格者が点検しなければなりません。設備の責任者は年に1回防火設備点検資格者に点検を依頼して、その結果を報告書にまとめて設備がある地区の消防署長に提出しなければならないのです。
違反すれば30万円以下の罰金か拘留の罰を受けます。
防火対象設備点検資格者は所定の講習を受ければ取得できますが、講習を受けるには消防設備士としての実務経験が必要です。
そのため、防火対象設備点検資格者の資格を取得しようと思ったら、まずは消防設備士の資格を取得し、実務経験を積みましょう。
小さな雑居ビルでも防火対象物に指定されていますので、防火設備点検資格者の需要は高いのです。
消防設備士の資格とあわせもっていけば、点検から設置、整備まで行えます。
ビル管理の仕事をしたい場合などにも重宝されるでしょう。
取得しておいて損はありません。チャンスがあるならチャレンジしてみてください。

5.おわりに

いかがでしたか?今回は防火対象物や特定防火対象物の種別や定期点検についてご紹介しました。
最近は強い地震もあいついでいますから、どんな建物でも防災に力を入れているでしょう。
そのため、消防設備士や防火対象設備点検資格者に対する需要も高まっているのです。
消防設備はただ設置しておくだけでは意味がありません。
いざというときにすぐに使えなければならないのです。
しかし、特に複数のテナントが入居している雑居ビルですと、ビルを使っている人たちの意識が防災へと向きにくいでしょう。
そのため、場合によっては防災設備の管理の仕方などを講習しなければならないときもあります。
防災設備士は決して目立つ仕事ではありませんが、いざというときに犠牲者を出さないようにする大切な役割を担っているのです。
ビルを借りている方は消防設備の点検や管理には、快く協力してください。
そうすれば、万が一のときも安心です。

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