
消火剤の種類と特徴は? 火事の原因によって使い分けるポイント
2016/01/13
冬は1年で1番火災が発生しやすい季節です。
ですから、不特定多数の方が大勢利用する施設などでは、普段よりも入念に消火設備の点検を行うこともあるでしょう。
そこで、今回は消火設備のひとつ、消火剤の種類や特徴についてご説明します。
消火剤は、消火器などにつめられているほか、消防自動車から噴出されるものもあるのです。
また、火災の原因によっては特定の消火剤しか使えないこともあります。
消防設備士を目指して勉強中の方も、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
1.消火剤とは?
消火剤とは、文字どおり火を消す効果のある物質です。
最もポピュラーな消火剤は水。
大抵の火事は冷水をかけることで消火できます。
しかし、中には水をかけると燃え広がったり、逆に爆発の危険があったりするケースもあるのです。
特に、消防法で指定されている危険物の中には、消火時に水をかけてはいけないというものも少なくありません。
ですから、消火剤は水のほかに強化液、泡、粉末、ガスなどの種類があります。
次の項で、その特徴について詳しく述べていきましょう。
2.消火剤の種類と特徴とは?
この項では、消火剤の種類とそれぞれの特徴をご紹介していきます。
水以外の消火剤には、どのような火災のときに使うのでしょうか?
2-1.水
消火と聞いて真っ先に水が思い浮かぶ、という方は多いでしょう。
水は、大抵の火災に使用できます。
水が使えない火災は、油火災、電気火災、そして水に触れると発火や爆発の可能性がある危険物が原因の火災の3種類です。
油火災とは、ガソリンや灯油などが燃えている火災のこと。
油は水に浮くので不用意に水をかけるとかえって火災が広がってしまいます。
また、食用油が発火したときも水をかけると一気に火柱が上がるのです。
電気火災とは、漏電が原因で起こる火災のこと。
電気が漏れている場所に水をかけると、感電の危険性があります。
ただし、水を霧状にしてかけたり電源を切ったりすれば大丈夫です。
危険物の場合は水をかけずにほかの消火方法を探します。
2-2.強化液
強化液とは、炭酸カリウム水溶液のことです。
この消火薬剤は、冷却効果があり霧状に噴射することで炭素カリウムの抑制効果が働きます。
油火災にも効果的ですし、普通火災や電気火災にも対応ができるのです。
2-3.泡
泡消火とは、冷却効果のほかに酸素を遮断する窒息消火を行う消火薬剤です。
火が燃えるには、酸素が必要。その酸素を絶てば火災も消えます。
泡には炭酸水素ナトリウムと硫酸アルミニウムの化学反応によって生じた二酸化炭素を含む化学泡。
そして、水に安定剤を溶かして空気と混合させて作る機械泡の2種類があります。
通常の火災と油火災に使えますが、電気火災は泡に電気が伝わって感電の危険があるので使えません。
2-4.ガス
ガスは泡消火と同じく、燃焼物に噴射することによって酸素を遮断し、窒息消火を行います。
ガスの成分は、二酸化炭素とハロゲン化物が使用されているのです。
どちらも油火災や電気火災に対応できますが、二酸化炭素ガスは密閉した室内で使うと窒息の危険性があります。
窓のない場所はもちろんのこと地下街などでも使えませんので、注意してください。
ハロゲン化物ガスは密閉した室内でも使用できますが、危険物の中にハロゲン化物と触れると有毒ガスを発生させるものがあります。
ですから、危険物が原因の火災のときは不用意に使わず、危険物取扱者の有資格者の指示に従ってください。
2-5.粉末
粉末は、炭酸水素塩等を原料にしたものとリン酸塩等が成分です。
こちらも、火元にかけることで酸素を遮断し、窒息消火を行います。
消火器に詰められて使われることが多いでしょう。
ちなみに、油火災と電気火災の消火に効果があります。
消防法では油火災をB火災、電気火災をC火災と呼ぶのです。
ですから、炭酸水素塩等の粉末が入った消火器を別名BC消火器、と呼びます。
なお、リン酸塩等が原料の粉末は、通常の火災でも効果を発揮するのです。
一般的な火災はA火災というのですが、リン酸塩等の粉末が入った消火器をABC消火器と呼びます。
ですから、消火器の名称を見ればどちらの粉末が入っているか一目で分かるでしょう。
3.消火剤の選び方
消火剤は、「火事になる原因」の種類だけそろえましょう。
たとえば、ビルの電気設備が集中している場所では、電気火災が起こる可能性があります。
この場合は、電気火災に対応できる消火剤を置いておきましょう。
また、危険物を取り扱ったり保管していたりする場所は、危険物取扱者の専任が必要です。
有資格者の指示に従って消火剤を設置してください。
また、消火剤は消火器に詰められているほか、消火栓というものもあります。
これは、火災が起きたらホースをつないで水を噴出する場所のこと。
ですから、その上や前へ車や荷物を置かないように気をつけましょう。
さらに、不特定多数が利用する設備は、消防法に定められた数の消火器や消火栓の設置をしなくてはなりません。
4.消火剤を使う際の注意点
水以外の消火剤は、体にかぶらないように注意しましょう。
特に、粉末消火剤は目に入ると痛くて開けていられなくなります。
屋外で使用する際は、風向きに十分注意しましょう。
また、二酸化炭素を利用した泡消火剤は、前述したように密閉した室内などで使わないように注意してください。
二酸化炭素の濃度が高まると、スッと意識を失ってしまうこともあります。
さらに、いざというときに慌てないように普段から避難訓練で消火器を使う練習をしておくとよいでしょう。
消火器で消火をする場合は、炎ではなく炎の根元を払うように噴射させます。
特に、窒息消火を行う泡やガスは、炎の上から振りかけても効果はありません。
火事の原因をおおうようにかけるのがポイントです。
5.古くなった消火器に要注意
消火器にも消費期限があります。古くなった消火器は、金属の器が劣化するのです。
消火器は、ガスの力で消火剤を押し出します。
しかし、消火器が古くなると器がガスの圧力に耐えきれず、容器が壊れてしまうことがあるでしょう。
消火器が爆発すれば、大変危険です。
ですから、消防設備士は定期的に消火器を交換してください。
中には一度も使われることなく廃棄される消火器もありますが、それはとてもよいことなのです。
6.おわりに
いかがでしたか?
今回は、消火剤の種類についてご紹介しました。
思っている以上にたくさんの種類があった、という方もいるでしょう。
今は、火災の原因もさまざまです。
ですから、不用意に消火活動を開始するのではなく、必ず火事の原因を調べてから始めてください。
2015年に中国の天津で起きた大爆発事故も、危険物に消火と称して水をかけたことが被害を大きくしました。
特に、大規模な商業施設などでは漏電による火災の可能性も高いです。
ですから、水をかけたりスプリンクラーが作動している中にうっかり足をふみ入れたりしないように注意してください。
また、水が使えないけれど水以外の消火剤がないという場合に有効なのが、砂です。
火元に砂をかけると、酸素を遮断して窒息消火が行えます。
いざというときのために、バケツなどに砂を入れて備えておくとより安心です。
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