
誘導灯の設置基準は? 種類や必要性、役立つ資格を解説!
2017/08/14
2021/04/07
誘導灯とは、急な災害時に避難がしやすいよう、避難口や避難方向を指示するための照明設備を指しています。多くは避難口に通じる通路に設置されており、非常時には誘導灯が指し示す方向を辿(たど)ることで、避難口にたどり着くことができるのです。重要な誘導灯だからこそ、設置基準が定められています。さらに、誘導灯の設置や点検に役立つ資格を取得したほうが、スムーズに作業ができるでしょう。本記事では、誘導灯の基礎知識や種類・設置基準・設置や点検・消防設備士の資格について説明します。
この記事を読むことで、誘導灯の設置基準や点検・関連資格などについて知ることができます。気になっている方はぜひ参考にしてください。
1.誘導灯の基礎知識
いざというときのために重大な役割を果たす誘導灯は、正常に作動するからこそ役立つものです。設置基準や点検について知る前に、基礎知識を身につけておきましょう。
1-1.誘導灯とは
スーパーマーケットやオフィスビルなどで、非常口を見たことがある人は多いでしょう。非常口の表示は誘導灯の1種で、避難を容易にするために避難口や避難方向を指示するための照明設備です。消防法施行令第26条と、各地方自治体の火災予防条例によって、人の多く集まる場所に設置が義務づけられています。
1-2.目的・必要性・重要性
誘導灯は、火事や地震などの災害時に、建物内の人々を安全な場所へ誘導する大切な照明器具です。突然の災害時に、きちんとした誘導器具がなければ、多くの人たちが危険な場所で立ち止まってしまいます。たとえば、火災が起きたときは、炎だけでなく煙にも包まれるでしょう。すぐに、酸素が確保できる外へ逃げなければなりませんよね。周囲が暗闇の中、照明器具が稼働していればその灯(あかり)をたどって脱出できます。
1-3.電源について
通常、誘導灯は常用電源により点灯しています。火災や断線・停電などの非常時には、自動的に非常電源に切り替わる仕組みです。そのため、電源が確保できなくとも、暗闇の中で効果を発揮することができます。ただし、誘導灯に備わっているバッテリーの寿命は、4~6年です。この期間を過ぎると、バッテリーの容量不足で誘導灯が役割を果たせなくなります。
1-4.非常灯との違い
非常灯と誘導灯を併用すれば、効果がアップします。非常灯とは、停電時に室内や廊下を照らす機能を有しており、避難誘導のための電灯です。人が集まる場所で、火災や事故などが発生した場合でも、人々を安全な場所へ誘導することができます。誘導灯と非常灯の違いは、使用目的です。誘導灯は非常口や避難経路を照らすためのものですが、非常灯は部屋や避難経路を照らすための器具となります。つまり、誘導灯は道筋を案内するガイド、非常灯は非難を速やかに実行するための灯(あかり)ですね。
2.誘導灯の種類
誘導灯には、どのような種類があるのでしょうか。
2-1.大きさ
誘導灯は、A級・B級・C級の3種類で大きさが区別されています。中でも、コンパクト形の誘導灯は寸法が小さく、A級が40cm角、B級が20cm角、C級が10cm角です。従来の誘導灯は、蛍光灯内臓でしたので、長時間の使用で変色するおそれがありました。しかし、現在の誘導灯はコンパクト形のLEDを使用するのが原則で、熱による変色の心配がありません。
2-2.目的別種類
目的に合わせて、「避難口誘導灯」「通路誘導灯」「客席誘導灯」「階段通路誘導灯」の4種類があります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
- 避難口誘導灯:緑色の地色に白色の矢印で、避難出口の場所を示す
- 通路誘導灯:白色の地色に緑色の矢印で、避難出口のある方向を指し示す
- 客席誘導灯:映画館や舞台などの客席のある施設で、足元を常時照らす
- 階段通路誘導灯:客席誘導灯と同じく、階段や傾斜路に設置して、一定の明るさを保つ
2-3.誘導方式の種類
誘導灯の誘導方式は、「一般型」「点滅式誘導灯」「誘導音付加型誘導灯」の3種類があります。一般的な客席誘導灯と階段通路誘導灯には、誘導機能はありません。しかし、避難口誘導灯と通路誘導灯には、音声などによる誘導機能がついているものがあります。誘導方式の特徴は、以下のとおりです。
- 一般型:矢印を表示する誘導方式で、多くの誘導灯に採用されている
- 点滅式誘導灯:矢印による表示のほかに、点滅機能が付加されている。明るさが可変する内照式と、ストロボフラッシュでより明るく点滅する外照式の2種類
- 誘導音付加型誘導灯:矢印による表示に点滅機能が付加されており、音声による誘導案内がくり返し流れる
2-4.光源の違い
従来の誘導灯は蛍光灯を使用していましたが、現在はほとんどがLED光源です。LEDは蛍光灯よりも熱に強く、変色する心配がありません。さらに、LEDはメンテナンスが必要不可欠ですが、省エネ・長寿命・小型化が可能となります。長く設置し続ける誘導灯だからこそ、省エネ効果があるLEDが最適です。
3.誘導灯の設置基準
誘導灯の設置は、消防法によって定められています。設置基準や設置場所と位置・設置数・免除される場合・注意点について詳しくチェックしていきましょう。
3-1.設置基準は?
誘導灯の設置基準は、消防法施行規則第28条の3で細かく定められています。設置が義務づけられている場所や、場所ごとの誘導灯の大きさ・距離・表示面縦寸法など決まっているのでチェックしてください。設置基準の詳細については、こちらで確認できます。
3-2.設置場所と位置について
誘導灯を設置しなければならない場所は、多くの人が集まる場所です。たとえば、劇場・映画館・ナイトクラブ・病院・百貨店・図書館・幼稚園・旅館・ホテルなどがあります。設置場所によって、階数ごとに設置するのか、それとも設置しなければならない場所が決められているのか変わるので要注意です。また、設置位置は足元や壁、天井につるすなど目的別で異なります。さらに、建築物によって、地階・無窓階・地上11階以上など、階数の指定も細かく定められているのです。
3-3.設置数について
誘導灯の設置数は、施設の面積によって異なります。大規模施設であるほど、誘導灯の設置も多くなるでしょう。また、大規模建築物の場合は「長時間型誘導灯」を設置しなければなりません。長時間型誘導灯は、電源が遮断されても内臓電池で60分以上の点灯が可能です。施設の規模によって、点灯時間のルールも決まっています。
3-4.免除される場合
消防法では、一定間隔において誘導灯の設置義務を規定しています。しかし、非常口などが明らかにすぐ見渡せる範囲や、避難口の存在を確認することが容易なケースでは設置義務が免除されるのです。免除されるケースもあるということを、覚えておきましょう。
3-5.注意点
避難口誘導灯は、避難口となる扉付近に設置しなければなりません。適した場所に設置しない場合は、誘導灯を導入していても消防法違反となるので要注意です。そのため、設置基準を理解し、適した誘導灯を適した場所に設置しなければなりません。
4.誘導灯の設置や点検について
誘導灯の規定は、設置だけでなく、点検についてもルールが決まっています。設備や点検の決まりごと・設置工事と点検ができる有資格者についてチェックしておきましょう。
4-1.設備や点検の決まりごと
誘導灯は正常に稼働しなければ意味がありません。確実に点灯するかどうか、定期的な点検を行い、不良箇所は交換が必要です。
4-1-1.点検義務について
誘導灯の点検は、消防法で義務づけられています。「設備の点検および報告義務」として、防火対象物の関係者は消防用設備等について総務省令の定めるところにより定期的に点検し、その結果を報告しなければならない、と記載されているのです。義務づけられている限り、点検を怠れば法律違反として罰金が科せられることになります。
4-1-2.時期・届出について
誘導灯を設置した場合、その旨を届け出て検査を受けなければなりません。定期的な点検の結果も報告が義務づけられているので、忘れないようにしてください。基本的に、定期点検は6か月に1回、定期報告は特定防火対象物が1年に1回、そのほかが3年に1回となっています。届出先は、所轄の消防著です。
4-2.設置工事と点検ができる有資格者
誘導灯の設置工事と点検の実施者は、誰でも良いというわけではありません。点検資格者は、消防設備士または消防設備点検資格者です。また、誘導灯の設置をする場合は、電気工事士などの有資格者が必要となります。
5.消防設備士について
それでは、誘導灯の点検に必要な資格「消防設備士」について詳しく説明します。
5-1.資格について
消防設備士とは、屋内消火栓やスプリンクラー・自動火災報知設備などの消防用設備の設置工事や整備を行うための国家資格です。甲種・乙種の2種類があり、甲種は消防用設備等または特殊消防用設備等の工事・整備・点検を行うことができます。乙種は、消防用設備等の整備・点検が可能です。
5-2.試験について
消防設備士の資格を取得するためには、国家試験に合格しなければなりません。試験は、一般財団法人消防試験研究センター主催で、全国各地で試験が行われています。試験地によって試験日が異なるので、詳細はこちらで確認してください。受験料は、甲種が5,000円、乙種が3,400円となります。
5-3.注意点
乙種消防設備士の試験は受験資格がありませんが、甲種消防設備士は受験資格が決まっているので注意してください。受験資格をクリアしていない方は、まず、乙種消防設備士の資格を取得すると良いでしょう。乙種を取得しても、整備・点検を行うことができます。
6.誘導灯と関連資格に関してよくある質問
誘導灯と関連資格に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
6-1.誘導灯を設置しなければどうなるのか?
消防法に反するものとして、懲役と罰金が科せられます。使用停止命令などを受けた違反者は懲役3年以下・罰金300万円以下、使用停止命令などを受けた違反法人は罰金1億円以下です。平成14年の消防法改正によって、より厳しい罰則が科せられました。
6-2.消防用設備の定期点検および報告の手順が知りたい
防火対象物の関係者が点検資格者に点検を依頼します。点検の結果を関係者へ伝えた後、報告を受けた関係者が所轄の消防署へ報告し、異常がある場合は修理・改修業者へ依頼する流れです。
6-3.消防設備士の合格率・難易度が知りたい
消防設備士の合格率は、甲種が30%前後、乙種が40%前後です。難易度は低めとされていますが、一夜漬けで合格できる試験ではありません。各科目40%以上の正解率かつ全体の60%以上の成績を収め、実技試験で60%以上の正解率であれば合格となります。
6-4.消防設備士の試験科目は?
消防設備士の試験科目は、以下のとおりです。
甲種
- 工事設備対象設備等の構造・機能・工事・設備
- 火災および防火
- 消防関係法令
- 基礎的知識
- 消防用設備等の構造・機能・工事・設備
乙種
- 消防関係法令
- 基礎的知識
- 構造・機能・整備
以上の筆記試験に加えて、実技試験があります。また、それぞれの試験の種別によって、含まれない科目もありますので、詳細は一般財団法人消防試験センターのホームページをご覧ください。
6-5.点検の内容は?
消防法で定められている点検内容は、目視確認・充電モニターの確認・性能確認などです。目視確認ではランプの点灯・本体などの外観の汚れを確認します。また、きちんと点灯しているか確認し、消灯しているときはバッテリーが充電されていない証拠となるため、交換しなければなりません。性能確認では、非常点灯に切り替えた際に、きちんと点灯しているかを確認します。
まとめ
誘導灯は、多くの人々を安全・安心な場所へ誘導するための照明器具です。消防法に基づいて、設置が義務づけられている場所では、必ずその場所に適した誘導灯を置かなければなりません。また、非常時にきちんと稼働するために、定期的な点検も必要です。点検・整備ができる者は、消防設備士という資格を取得する必要があります。誘導灯の設置基準や消防設備士についてきちんと知識を身につけてから、試験に挑みましょう。
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