
工事現場の安全対策はどのように行う? 安全管理を担う役職とは?
2017/05/18
2017/06/13
工事現場とは、建築物を作ったり解体したりする現場のことです。重機などを多数使用する大規模な現場ほど、労働災害が起こる可能性も高くなるでしょう。そのため、工事現場の安全対策は数ある職場の中でも、特に入念に行われているのです。安全対策がしっかりと行われている職場ほど、従業員にとって働きやすい職場といえるでしょう。しかし、自分が働いている職場の安全対策がきちんと行われているか、よく分からないという方もいると思います。
そこで、今回は工事現場における安全管理の重要性や安全対策の内容について、解説しましょう。
この記事を読めば、安全対策の重要性もよく分かりますよ。職場で安全管理を担う職務に就いている方も、ぜひ読んでみてくださいね。
1.工事現場とはどんな場所?
工事現場とは、建築物の建造や解体を行う現場のことです。ビルやマンションといった建物のほか、橋・道路・トンネルなどの土木工事も工事現場に含まれます。大規模な工事現場になるほど、工事車両をはじめとする、いろいろな建築機械が使われることでしょう。また、高所・水中・地下などでも⼯事を行うことも珍しくありません。ですから、ほかの職場に比べると労働災害も発生しやすくなります。そのため、安全管理や安全対策も厳重に行われるのです。
2.工事現場の安全対策について
この項では、工事現場の安全対策について解説していきます。どのような対策があるのでしょうか?
2-1.安全対策の種類
安全対策とは、工事を行っている最中に事故が起こらないように行う対策のことです。主な例を以下の項で説明していきましょう。
2-1-1.重大死亡事故防止対策
転落・倒壊・転倒・落下・はさまれ等の事故を防止する対策です。労災を防止するための最も基本的かつ重大的な安全対策といえます。高所の作業場に策を取りつけたり、足場に滑り止めのゴムをつけたりしたりと、工事の種類によって行う対策はさまざまです。
工事現場で作業をする方が必ずヘルメットをかぶっていたり、工事現場が金属板で囲われていたりするのも、重大死亡事故防止対策の一種になります。
2-1-2.安全確認や器具の点検、注意喚起を促す看板の設置
工事に使う器具や機械、安全確保の道具などは可能な限り毎日点検を行います。特に、器具や機械は使い続ける限り劣化するので、急な故障や破損を防ぐためにも点検は大切です。
また、労働災害を防止するための注意事項は口頭で伝えるだけでなく、看板などを設置し、常に目に入るようにしておきましょう。
2-1-3.安全教育
労働災害を防ぐための注意事項や、仕事の手順などはマニュアルを製作して配るだけでなく、口頭で伝えることが大切です。新人教育はもちろんのこと、ベテランの従業員向けの教育も定期的に行いましょう。
また、安全対策は、過去の労働災害の事例を踏まえ、日々改善されています。また、工事現場によって必要な安全対策も異なるので、工事現場ごとにマニュアルを作ったり、工事ごとに責任者が必要な安全対策を話し合ったりするのも必要です。
2-1-4.安全管理を担う職務を行う役職の選任
安全管理を行う責任者を選任することも、安全対策の一つです。誰でも選任すればよいというわけでなく、安全管理に関する知識や、工事で扱う機械や器具についての知識を持っている方を選任します。
2-2.安全対策を行う職務について
安全対策を行う職務には、以下のようなものがあります。
2-2-1.統括安全衛生責任者
特定元方事業者の事業場で、特定元方事業者の労働者と関係請負人の労働者の作業が同一の場所で行われ、かつ労働者が50名以上いる場合に選任が必要です。ただし、ずい道等の建設や圧気工法による作業を行う作業現場で、常時30人以上が働いている場合は選任が必要になります。
2-2-2.元方安全衛生責任者
特定元方事業者の元で、協議組織の設置や運営・作業間の連絡や調整・衛生管理・作業場の巡視を行うことができる役職です。理系の大学などを卒業し、厚生労働省が定める講習を修了した方が選任を受けることができます。
2-2-3.安全管理者・安全衛生推進者
安全管理者は下請け・元請けにかかわらず50名以上が働く作業場で選任が必要です。1次下請け、2次下請けなどがある場合は、下請けごとに選任が必要になります。50名未満の労働者が働く現場では、安全衛生推進者が選任され、安全管理者の職務を行うのです。
2-2-4.主任技術者・監理技術者
主任技術者は、すべての工事現場で選任が必要です。監理技術者は下請契約の請負代金総額が4,000万円以上、(建築一式工事は6,000万円以上)になる場合の工事現場に選任が必要になります。
行う仕事内容は、ほぼ同じです。施工管理や施工計画を立てる・安全管理など
これら役職の選任条件は、労働安全衛生法や建築業法によって定められていますので、法律に基づいて責任者・技術者・管理者を選任しなければなりません。
工事の規模が大きくなり、危険な作業が多い職場ほど複数の管理者や技術者の選任が必要です。
2-3.安全管理者などになる方法
安全管理者など、安全対策や安全管理を担う役目に選任されるには、安全管理の実務経験を積み、厚生労働省が定める研修を修了しなければなりません。元方安全衛生責任者や統括安全衛生責任者になるためには、研修などを受ける必要はありませんが、定められた理系の学部を卒業し、安全管理の実務経験が必要です。なお、統括安全衛生責任者には、現場の責任者など立場のある方が選任されます。
2-4.主任技術者や監理技術者になる方法
主任技術者や監理技術者は、施工管理技士の資格を取得していれば、選任を受けることができます。施工管理技士には、管工事や電気・建築機械など複数の種類があり、技術者の指導や施工管理・施工計画を建てたりするほか、安全管理も職務の一環です。特に、専門的な知識が豊富なので、工事車両などの安全管理は建設機械施工管理技士が行うことが多いでしょう。
施工管理技士になるには、実務経験を積んだ後で資格試験を受けて合格する必要があります。
3.工事現場の安全対策の行い方
この項では、工事現場の安全対策を行う時期などを説明していきます。いつ行うのでしょうか?
3-1.工事が始まる前
工事が始まる前、事業者は安全管理者や安全衛生責任者・主任技術者などを選任します。また、作業員が休息をとる場所の整備など、快適な作業環境を作ることも大切です。
作業員に対しては、安全衛生教育を行い、緊急連絡体制を作ります。また、安全標語・注意喚起標識・作業中止基準などを看板などにして明示しておくことも重要です。救急箱や消火器など応急処置などができるものも忘れずに設置しておきましょう。
3-2.工事中
工事中は、毎日保護具をはじめとする安全対策のための器具・工事に使う車両や機械を点検し、安全ミーティング(KY活動)を行います。KY活動とは、「危険予知活動」の略語で、事故や災害を未然に防ぐことを目的とし、作業に潜む危険を予測して指摘し合う活動のことです。毎日のKY活動の総括を、安全対策協議会の議題にあげることもあるでしょう。
主任技術者や監理技術者・安全管理者などが工事中の安全管理を行い、元方安全衛生責任者などは職場巡視を行って労働災害を防ぐための指導を行います。
なお、工事現場によっては工事車両がひっきりなしに現場に出入りすることもあるでしょう。車両を安全に工事現場内に誘導したり、付近を通行する人々に注意を促したりする警備員を配置するのも、安全対策の一環です。
3-3.事業者の役割
事業者とは、工事を請け負った会社のことです。たとえば、建築会社が工事を請け負った場合は建築会社が事業者となります。安全管理者や安全衛生責任者・主任技術者などの選任義務は、事業者にあるため、選任が行われなかった場合は罰則を受けることになるでしょう。
また、労働災害が発生した場合、基本的に責任は事業者にあります。ただし、再三指導したにもかかわらず、現場で働く従業員が安全対策を無視して仕事をした結果労働災害が起こったという場合は、事業者の責任が軽くなることもあるでしょう。
労働災害が起こったら、事業者は安全管理者や安全衛生責任者から災害の発生状況や原因の報告を受け、労働基準監督署などに報告を行い、再発防止に努めなくてはなりません。
3-4.マニュアルの作成等について
労働災害を防止するために、安全対策のマニュアルを作る職場もあります。また、各都道府県にある安全教育センターでは、作成したマニュアルをPDF形式にしてインターネット上で公開しているところもありますので、それらを参考にして安全対策を行ってもよいでしょう。しかし、マニュアルに頼るだけでなく、安全対策協議会やKY活動での報告や意見を元に、工事現場ごとの安全対策を行うことも大切です。
4.工事現場の安全管理に対するよくある質問
Q.安全衛生責任者や安全管理者等以外に、安全管理を行う職務を担う役職はありますか?
A.ずい道掘削工事・足場の組み立て作業・建築物の組み立て作業など危険が伴う作業は、作業主任者を選任し、主任技術者や監理技術者・安全管理者と共に従業員の監督や指導・安全管理などを行うことがあるでしょう。
Q.一般家屋の解体のような小規模な工事でも、安全管理者などは選任が必要ですか?
A.小規模で1日程度で終わる工事の場合は、主任技術者が安全管理を行います。
Q.工事現場では衛生管理者は選任しないのですか?
A.安全衛生責任者や安全衛生推進者が衛生管理者の職務を担います。
Q.実務経験がないと安全管理者の選任は受けられないのでしょうか?
A.はい。受けられません。
Q.労働安全衛生法や建築業法に違反をしていた場合、罰則を受けるのは事業者ですか?
A.基本的には事業者になります。
Q.労働災害が発生した場合、安全衛生責任者や安全管理者は罰則を受けるのでしょうか?
A.職務を長期間放棄していたなど、よほど悪質でない限り罰則を受けることはありません。その代り、再発防止のための対策を立てて実行する必要があります。
5.おわりに
いかがでしたか? 今回は工事現場の安全管理について解説しました。多くの方がかかわり、使う建設機械が多くなるほど安全管理の項目も増えます。安全管理を行う人も複数の選任が必要になるでしょう。工事現場での労働災害は、3月をピークに減少する傾向があります。3月は工事数が多いため、どうしても労働災害も発生しやすくなるでしょう。冬から春にかけて、安全管理もより気を引き締めて行うことが大切です。
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