
徹底解析!活性炭の吸着メカニズムと公害防止効果
2016/05/12
活性炭は効果が見直されている自然が生んだ公害防止グッズのひとつです。浄水やにおい取り、また毒物を誤って摂取したときの吸収剤としても活用できます。とはいえ、活性炭がどのように有害物質を吸収するのかはあまり知られていません。
そこで、活性炭の吸収メカニズムとどのような公害防止効果を期待できるのかをご紹介します。
1.活性炭の性質
1-1.活性炭と木炭の違い
木炭や竹炭は日本で昔から活用してきた燃料です。同時に、日本では昔から木炭や竹炭を消臭や浄水にも使っています。炭が消臭や浄水に使われる理由のひとつは、多孔質と呼ばれる炭がもつ性質です。
多孔質とは、簡単に言うなら微細なすきまがたくさん空(あ)いていることで、多孔質の物質は、このすきまがあるため全体の表面積が大きくなります。そして、不純物がこの微細孔(びさいこう)に入り吸着するのです。炭のこの性質を人工的により高めた炭が活性炭となります。そのため、活性炭には木炭とは比較にならないほど不純物の吸着力があるのです。
1-2.活性炭ができる仕組み
活性炭は、木炭をはじめ、ヤシ炭や泥炭を原料としています。すでに炭になった物質を人工的に加工し、ガスや薬品を使用して微細孔(びさいこう)が多くある活性炭を作るのです。木炭を活性炭にする場合は、薬品を使います。木材の繊維質を侵食する薬品を使い、すきまを多く作りながら、さらに木炭を高温で炭化するわけです。
ヤシ炭や泥炭を活性炭にする場合は、ガスを使います。ヤシ炭や泥炭を1000度ほどの高温でさらに炭化して、微細孔(びさいこう)を作るのです。実際には、炭化だけではなく、水洗や乾燥など多くの過程を経て活性炭が完成するため、製造の手間はかかります。しかし、活性炭には手間をそこまでかけるだけの価値があるのです。
1-3.活性炭に注目が集まる理由
木炭や竹炭にも脱臭効果や浄水効果がありますが、微細孔を多くもつ活性炭は、木炭や竹炭よりもさらに強力な脱臭効果や浄水効果があるのです。空気中や水中の有害物質を吸収するだけではなく、誤って飲用した毒物の吸収にも効果があります。また、活性炭は原材料を確保しやすいことも大きなメリットです。活性炭の原材料にはヤシ炭を多く使いますが、ヤシ炭はヤシの実の内果皮と呼ばれる殻部分から作ります。ヤシの実の内果皮はほかに用途がないため、活性炭の資源は豊富にあるわけです。
2.活性炭の吸着メカニズム
2-1.吸着する仕組み
それでは、活性炭はどのように有害物質を吸収するのでしょうか。微細孔のすきまに不純物が入るという単純な仕組みではありません。界面現象による吸着がその仕組みであり、「ファンデルワールス力」という原子や分子レベルに生じる力が関係しているのです。「ファンデルワールス力」による吸着は、分子同士の引き合う力で吸着します。いわば、「物理吸着」です。
また、活性炭の吸着メカニズムには、イオン結合と呼ばれる化学的な吸着もあります。イオン結合は活性炭を製造する段階で意図的に付加する性質です。活性炭を使う目的に合わせて、製造の際に特定の物質を吸着する性質を付加できます。
2-2.極性から見た活性炭のメリット
活性炭の表面には非極性の性質があります。「極性がある」ものは、通常水に溶けやすいものです。そのため、結論から言うなら、活性炭は極性のあるもの、つまり水に溶けやすいものは強く吸着できません。逆に、水に溶けにくいものは吸収しやすいのです。そのため、吸着するべき物質や毒物が非極性なら、活性炭の最大効果を期待できるでしょう。
また、この知識を活用すれば、活性炭とほかの手段を組み合わせて徹底した浄水効果を計画することができます。
2-3.活性炭の選び方
活性炭には、いろいろな種類があります。原料が違うなら、活性炭の「灰分」が異なるでしょう。「灰分」が高いほど不純物が含まれています。また、硬度にも違いがでるでしょう。使用用途によっては、最初から粉砕した添着炭(てんちゃくたん)を用いるケースもあります。このように目的や要求する質によって、選ぶべき活性炭は異なるのです。原料や特徴を考えて、適切な活性炭を選びましょう。
3.活性炭の吸着物質
3-1.環境保護に役立つ活性炭
活性炭素は非極性であるため、水に溶けにくい物質を除去するのに役立ちます。ベンゼンなどの有機化合物やにおいのもとになる有機物は、強く吸着するでしょう。とはいえ、水に溶けやすい硝酸塩や無機イオンなどは強く吸着できません。とはいえ、においや一般的な汚れを取り除くには強い効果があるため、活性炭は、家庭や施設で十分に利用価値が高い浄水手段のひとつです。
また、空気中の有機化合物も吸着できるため、脱臭効果も期待できます。ただし、空気中の分子の小さいものは吸着しないため、空気清浄効果には限界もあるでしょう。
3-2.医療用途にも用いる
医療現場でも、毒物を誤って服用した場合に、活性炭を大量に投与することを勧めています。胃の中に食べ物が残っているなら、活性炭が有機物質を集中的に吸収するため、毒物とともに消化した食物も吸収するでしょう。そのため、毒物の吸着効果は減少します。とはいえ、緊急対応として医療現場でも強く勧めている事実は、活性炭の強い吸着力を証明しているわけです。
3-3.今後の公害防止対策
活性炭は、今後も水質環境や大気環境を守るために、積極的に活用できる公害防止対策です。同時に、水に溶けやすいものは吸着しにくいため、そのほかの浄水方法などと併用する必要もあるでしょう。公害防止対策の方法はさまざまですが、今後の地球環境を守っていくためにも、経済的メリットと効果を踏まえた環境対策がより推進していくことが期待されています。その点で、現在注目が集まっているのが、公害防止管理者と呼ばれる国家資格です。公害防止管理者は、正しい知識を活用して、環境保護を促進していく重要な責任をもっています。
まとめ
いかがでしたか? 活性炭は炭がもつ特性をさらに強化した環境保護素材です。原材料の供給も安定しており、運用に経費がかからないため、賢い活用方法が今後も期待されています。環境保護の必要性が高まる中、活性炭の活用を含め、正しい知識をもって環境保護を促進する技術者はますます必要になるでしょう。公害防止管理者をはじめ、企業では多くの資格保持者を必要としているため、総合的な勉強を行って資格を取得することで、多くの企業が必要とする貴重な人材になれるはずです。
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