ビル管理法における水質検査とは? ~安全な飲料水を提供するために~

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大勢の人が行き交うビルや大型商業施設などは、ビル管理法に基づいて衛生管理が義務づけられています。衛生管理の中に含まれているのが水質検査です。飲み水や給水室などで使う水は常に清潔でなければなりません。もし、飲み水を蓄えるタンクが汚れていると、健康に悪影響をおよぼすことになります。

そこで本記事では、ビル管理法による水質検査の基礎知識や検査内容・ビル管理士の役割と取得ポイントなどについて詳しく見ていきましょう。

  1. ビル管理法による水質検査の基礎知識
  2. ビル管理法による水質検査の内容
  3. 水質検査とビル管理士について
  4. ビル管理士になるには
  5. ビル管理士の資格取得について
  6. ビル管理法の水質検査・ビル管理士に関してよくある質問

この記事を読むことで、ビル管理法による水質検査の内容やビル管理士になるために必要な情報を知ることができます。資格取得を目指している方はぜひチェックしてください。


1.ビル管理法による水質検査の基礎知識

水質検査はビル管理法に基づいて実施しなければなりません。まずは、ビル管理法の概要や水質検査の基礎知識について把握しておきましょう。

1-1.ビル管理法について

ビル管理法は建築物における衛生的環境の確保に関する法律のことです。一般的に省略してビル管理法と呼ばれていますが、東京都ではビル衛生管理法とも呼ばれています。不特定多数の人が出入りするビルを管理する法律であり、ビル管理法は建築物環境衛生技術者(ビル管理技術者)の選任義務も定められている法律です。主に、不特定多数の人が出入りする施設の清潔さを保ち、人々の安全を守るための法律でもあります。

1-2.水質検査とは

水の色・硬度・においなどの性質を調べるのが水質検査です。また、有害な化学物質の有無も調査します。水を検査するうえで、使用目的の基準に合致するかどうかを判定しなければなりません。もし、基準以上の数値が出ている場合は早期改善が必要です。水質検査の方法は大きくわけて、理化学的試験・細菌学的試験・生物学的試験の3つがあります。

  • 理化学的試験:水中の浮遊物・溶解成分の種類と量を測定する
  • 細菌学的試験:水中に混入した細菌類の有無や量を測定する
  • 生物学的試験:顕微鏡を使って水中生物の種類や数を測定する

1-2-1.対象となる建物

ビル管理法が適用される建物を特定建築物といいます。特定建築物は水質検査をしなければなりません。特定建築物に該当する建物は以下の条件に当てはまる施設です。

  • 床面積が3,000平方メートル以上の特定用途に使われる建築物:百貨店・美術館・博物館・図書館・旅館など
  • 床面積が8,000平方メートル以上の学校:幼稚園から大学まですべての教育施設(研究所以外)

1-2-2.必要性

特定建築物は不特定多数の人たちが出入りする場所です。そのため、水質をきちんと管理しなければ不特定多数に悪影響をおよぼすことになります。有害物質が水の中に入っていれば健康被害をおよぼしかねません。人々が安全を確保するためにも水質検査が必要なのです。

2.ビル管理法による水質検査の内容

特定建築物の水質検査はビル管理法によって定められています。水質検査の決まりごとや内容・項目などについて詳しく把握しておきましょう。

2-1.水質検査の決まりごと

水質検査は検査内容によって数か月~数か年に何回しなければならないと回数が決まっています。回数は水源によって異なるため注意してください。

水道または専用水道から供給する水のみを水源として供給する場合

  • 省略不可項目・重金属・蒸発残留物の場合:6か月に1回
  • 消毒副生成物の場合:1年に1回(6月1日~9月30日までの間)

地下水、そのほかの水を水源として供給する場合

  • 省略不可項目・重金属・蒸発残留物の場合:6か月に1回
  • 消毒副生成物の場合:1年に1回(6月1日~9月30日までの間)
  • 有機化学物質の場合:3年に1回
  • 全項目:建築物竣工(しゅんこう)後と給水設備の使用開始前に1回実施

また、雑用水に関してはpH値・臭気・外観・遊離残留塩素の検査を7日以内ごとに1回、大腸菌と濁度の検査を2か月ごとに1回実施しなければなりません。

2-2.水質検査の内容と項目

水質検査の内容・項目は省略不可項目(11項目)・重金属(4項目)・蒸発残留物(1項目)・消毒副生成物(12項目)・有機化学物質(7項目)にわけられます。それぞれの具体的な項目を以下にまとめてみました。

省略不可項目(11項目)

  • 一般細菌
  • 大腸菌
  • 亜硝酸態窒素
  • 硝酸態窒素および亜硝酸態窒素
  • 塩化物イオン
  • 有機物(全有機炭素の量)
  • pH値
  • 臭気
  • 色度
  • 濁度

重金属(4項目)

  • 鉛およびその化合物
  • 亜鉛およびその化合物
  • 鉄およびその化合物
  • 銅およびその化合物

蒸発残留物(1項目)

  • 蒸発残留物

消毒副生成物(12項目)

  • シアン化物イオンおよび塩化シアン
  • 塩素酸
  • クロロホルム
  • ジブロモクロロメタン
  • 総トリハロメタン
  • ブロモジクロロメタン
  • ブロモホルム
  • クロロ酢酸
  • ジクロロ酢酸
  • 臭素酸
  • トリクロロ酢酸
  • ホルムアルデヒド

有機化学物質(7項目)※水源が水道水の場合

  • 四塩化炭素
  • シス-1.2-ジクロロエチレンおよびトランス-1.2-ジクロロエチレン
  • ジクロロメタン
  • テトラクロロエチレン
  • トリクロロエチレン
  • ベンゼン
  • フェノール類

2-3.どこでするのか

主に、貯水槽・受水槽についている給水栓から出した水の検査をおこないます。施設内にあるトイレや給湯室の蛇口から水をくみ、調査することもあるでしょう。水質検査はほとんどの施設が専門機関に依頼しているのです。水質検査をおこなう機関と年間契約を交わしているところも多くあります。

2-4.特殊なものについて

特殊な水質検査として、大腸菌検査(プール水検査)とレジオネラ菌検査(温浴水検査)があります。プールで泳ぐときは全身が水に包まれるため、プールの衛生管理における水質基準は厳しいのです。民間営業のプールは許可制、学校のプールは届け出制となっており、水質基準をクリアしておかなければなりません。また、プールと同じようにお風呂もレジオネラ菌検査が必要です。レジオネラは自然に多く生息している菌であり、体の中に入るとレジオネラ症に感染する可能性があります。

3.水質検査とビル管理士について

すべての人が水質検査を実施できるわけではありません。水質検査はビル管理士の資格を取得している者だけができる職務です。ビル管理士の基礎知識をチェックしておきましょう。

3-1.ビル管理士とは

ビル管理士はビル管理技術者とも呼ばれており、特定建築物の所有者・占有者などに対して意見を述べる権限を持っています。意見の尊重義務が法律で定められているのです。つまり、特定建築物の管理における事実上の最高責任者といってもいいでしょう。ビル管理法に基づいて大型施設を管理する国家資格の1つです。

3-2.水質検査におけるビル管理士の任務とは

ビル管理士は水質検査の実施ができます。しかし、ビル管理士1人だけで受水槽や貯水槽の掃除や水質検査をするわけではありません。ほとんどの場合が、水質検査をおこなっている機関に依頼しています。また、オーナーやテナントからの苦情に対応して再検査をおこなうなど、ビルをより良い環境にするための役職なのです。

3-3.水質検査の記録

実施する水質検査の記録や結果を保存することもビル管理士の大切な仕事です。基本的に、水質検査の記録・結果は5年間保存しておかなければなりません。国から調査結果の提示を求められた場合は、すぐに提出する必要があります。また、過去の結果を見直しながら改善策を立てることもできるのです。

4.ビル管理士になるには

ビル管理士になるためには基礎知識を身につけておかなければなりません。主な職務や職場・資格概要・取得のメリットについて説明します。

4-1.主な業務・職場

ビル管理士の主な業務は、建築物の環境衛生の維持管理です。建築構造・設備・室内環境・衛生・給排水・清掃・害虫・ねずみ防除・廃棄物などとビル管理に関する業務をおこないます。また、オーナーやテナント・利用者からのクレーム対応・管理費・下請け事業者との契約・官公署との連絡調整も大切な仕事です。主な職場はビル・商業施設・ホール・ホテルなど大規模・中規模建築物になります。

4-2.資格について

国家資格であるビル管理士の正式名称は建築物環境衛生管理技術者です。どんな資格なのでしょうか。

4-2-1.概要

国家試験に合格するとビル管理士として働くことができます。ビル管理士は特定建築物に1人を選任しなければならない義務があり、ビル管理に関する専門知識を持っているあかしです。特定建築物には必要不可欠な存在といえます。

4-2-2.関連する資格

ビル管理士に関連する資格はたくさんあります。中でも代表的な資格を以下にピックアップしてみました。

  • 電気主任技術者:電気設備の工事・保守・運用などの保安監督者
  • 電気工事士:電気設備の工事ができる者
  • ボイラー技士:ボイラーを専門に扱う者
  • ビルクリーニング技能士:ビル清掃・クリーニングに関する知識を持っている者
  • 衛生管理者:労働環境の衛生的改善と疾病の予防処置・衛生全般の管理をする者

4-3.資格取得のメリット

ビル管理士の資格を取得すると、特定建築物の最高責任者として働くことができます。ビル管理に関するすべての業務をおこなうため、職務は幅広いのです。ビル設備の点検・検査はもちろんのこと、オーナーやテナントとのコミュニケーションも大切な要素といえます。また、特定建築物はビル管理士を選任しなければならないため、転職・就職にも役立つ資格です。

5.ビル管理士の資格取得について

ビル管理士の資格取得を目指すためにも、資格試験の内容をチェックしておきましょう。資格取得のポイントや勉強法についても説明します。

ビル管理士の試験は毎年1回、10月上旬ごろに開催されています。受験資格があるため注意しなければなりません。

5-1.受験資格

厚生労働省令で定められた建築物の用途部分において、省令が定める実務に2年以上従事した者が受験できます。実務に従事した建築物の用途と実務内容は以下のとおりです。

実務に従事した建築物の用途

  • 興行場・百貨店・集会場・図書館・博物館・美術館・遊技場
  • 店舗・事務所
  • 学校
  • ホテル・旅館
  • そのほかの類する建築物

実務内容

建築物における環境衛生上の維持管理に関する実務

  • 空気調和設備管理
  • 給水・給湯設備管理
  • 排水設備管理
  • ボイラー設備管理
  • 電気設備管理
  • 清掃・廃棄物処理
  • ねずみ・昆虫などの防除

5-2.試験内容

試験は午前と午後に3時間ずつおこなわれます。試験内容は以下のとおりです。

午前中
  • 建築物衛生行政概論(20問)
  • 建築物の環境衛生(25問)
  • 空気環境の調整(45問)
午後
  • 建築物の構造概論(15問)
  • 給水および排水の管理(35問)
  • 清掃(25問)
  • ねずみ・昆虫などの防除(15問)

6.ビル管理法の水質検査・ビル管理士に関してよくある質問

ビル管理法の水質検査とビル管理士に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

6-1.不特定多数が利用しても、ビル管理法が適用しない建物とは?

不特定多数が利用していてもビル管理法が適用しないのは、特殊な環境にあたると判断された建物です。たとえば、病院・老人ホーム・大規模なマンションなどがあげられます。

6-2.貯水槽の清掃後、検査は必要か?

飲料水をためている貯水槽の清掃後は、残留塩素の含有率・色度・濁度・臭気・味と5つの検査を実施しなければなりません。そして、すべて基準を満たしているかどうか確認します。

6-3.検査基準を満たしていない場合は?

検査基準を満たしていない場合は、原因を調査して必要な処置を取らなければなりません。原因がわかれば正しい処置ができます。早めに対処しなければ、体調不良や下痢など飲料水による健康被害が起きる可能性があるので要注意です。

6-4.ビル管理士の講習会とは?

103時間の講習を受講することで試験を受けなくてもビル管理士の資格が取得できます。しかし、受講資格条件があるので注意しなければなりません。受講資格条件は日本建築衛生管理教育センターのホームページで確認できます。

6-5.ビル管理士の合格率は?

過去10年の合格率を見てみると、10%~20%前半が平均です。問題の数が莫大(ばくだい)かつ試験範囲が幅広いため、しっかり勉強をしておかなければなりません。過去問から似ている問題が出される可能性もあります。過去問を何度もくり返して、試験に慣れておきましょう。

まとめ

ビル管理法における水質検査は、ビルを利用している人たちが安全・安心に過ごせるために必要なことです。特に、飲料水は直接体の中に入れる水なので、定期的な検査を実施して安全基準を維持し続けていかなければなりません。また、水質検査を実施・担当する者はビル管理士です。ビル管理士はビルなどの大型施設の実質的な最高責任者といえます。全体的なビル管理業務をおこない、オーナーやテナントとのやり取りなど大切な役職です。ビル管理士として働くためにも、水質検査はもちろん、資格概要や試験のポイントを把握してくださいね。

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